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のれん償却!

皆さん、おはようございます!
先日、久しぶりにドライブがてら羽田空港に行ってきました。忙しさに感けていたせいで気持ちの思うがまま息抜きを決め込んでいたら、無性に潮の香りとジェット燃料の匂いを嗅ぎたくなった訳です。旅客機が飛び立つ滑らかな英姿は本当に優雅で見ていてホッとします。



最近、立て続けに経営者心理を題材にしていたせいか、久々に会計の話題を記載してみたくなりました。私のこれまでの研究テーマの中から「のれん」について取り上げてみたいと思います。会計上のれんはブランド力など超過収益力の対価とされ、買い手が無形資産として計上する、M&Aの支払金額が買収相手の純資産を上回る場合に認識することになります。


この取得のれんを定期償却するか否かで、これまで国際会計基準(=IFRS)の設定団体
、国際会計基準審議会(=IASB)の中で議論が続けられてきましたが、ようやく日本基準のように定期償却により費用処理する方向で、この秋にも決着するようです。思えば約20年ほど前にIASBがのれんを費用処理せず減損処理する決定を為した時に始まります。


のれんの会計処理が注目を集めているのは、日本とIFRSの間でその会計規定が異なるからです。日本の会計基準では、のれんを最長20年にわたって定期償却し、価値を少しずつ減耗させて毎期の費用とします。これに対してIFRSでは、のれんを償却せず買収した事業や企業の業績が悪化した際に、損失計上(=減損処理)を行うという違いがあるのです。


のれんを償却するのか否かによって、損益計算書上の利益額が大きく異なってきます。最近では日本でも、IFRSによる会計処理することが任意に認められており、例えばソフトバンクグループで5兆円、武田薬品工業で4.4兆円、日立製作所やJTで2.1兆円もの企業買収によるのれんが償却されることなく貸借対照表に積み上がっている現実があります。


これら企業がのれんを定期償却すれば、年間で2千億円もの追加費用負担が発生することになります。もともとIASBがなぜのれんを償却せずに貸借対照表に計上したままにしたか歴史を紐解きますと、財務諸表の目的を毎年の経営成績を示す損益計算書よりも貸借対照表により企業の経済価値の判断に有用な情報を提供することが重要と考えたことにあります。


ところがその結果、世界的に大型M&Aを助長することになり、日本だけでもIFRS基準適用企業ののれんが2022年3月末時点で合計約31兆円にも上り、仮に企業が巨額の減損を迫られることになれば金融危機を惹き起す事態にまで波及してしまう市場システミックリスクが懸念されるまでに至っていることにIFRS改訂の真相の根深さがあるようです。


金融市場のグローバル化に従い、そこで資金を調達する企業の会計基準をグローバルスタンダード化しようという動きは変わらないものと思います。こののれん償却問題は、つい最近まで日本基準をIFRS基準に統合しようとする動きだったと思います。それを翻してまで日本基準に合わせようとする流れになっていることは、政策判断だと受け止めるべきです。


元来、会計基準というものは相対的な真実を追求するものであり、時代的な環境背景によりその相対的真実性も移り変わるものです。その意味では、損益計算書や貸借対照表といった財務諸表を絶対的に鵜呑みにすることなく、会計基準の限界を理解しながら読み解くことが必要になります。その相対的アロワンスを見抜く目利き力は、これからも不可欠でしょう。


今日もありがとうございます!
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