誰にも聞けない経営財務戦略!

ビジネスの未来を財務と心で読み解くブログです!

CREATE LIFE!
より良い暮らしを創造しよう!

http://crelife.co.jp

キリンビール対機関投資家!

皆さん、おはようございます!
事業の新しい芽というものは、意外と今までの経験の中に潜んでいるものだと思います。
時代の先読みをして一足飛びに新しいことを手掛けるのではなく、自身の出来ることに軸足を置きながら、それをこれから到来するであろう方向に向けるのが正しいと思います。



キリンホールディングス(=キリンHD)は、英投資運用会社フランチャイズ・パートナーズ(=FP)との間で、ビール事業の将来性を巡り、経営モデルのあり方について対立しています。健康分野を新たな収益源として事業の柱にして行きたいキリンHDに対して、多角化を排しビール専業でグローバル展開を迫るFPの攻防が注目を集めています。


キリンHDといえば、協和キリンを皮切りに、協和発酵バイオとファンケルに合計2600億円を出資し、健康分野への進出を鮮明にしています。ところが、2019年8月の協和発酵バイオにおける品質管理問題が響き、2020年12月期の健康分野の事業損益は20億円の赤字となる見込みです。この点が、健康分野へ傾注する根拠を弱めています。


一方、FPの主張は、キリンHDの理論株価が3700円であるのに対して、これら健康分野への投資以降、実勢株価が3分の2に留まっており、配当水準も低迷している理由として、コングロマリット・ディスカウント(=多くの事業を抱える複合企業の企業価値が、各事業ごとの事業価値の合計よりも小さい状態のこと)に陥っているとしています。


日本国内での販売数量の減少が続く成熟市場でも、商品の高級路線で成長することができる他、中核のビール事業で有望な日本、オーストラリア、ミャンマーなどへ集中すべきだとしています。FPのスタンスは、明確にファイナンスの論理に裏付けられた考え方であり、理屈上は規模の利益を追求し効率性を高めることが株価を高めるものとしています。


将来のことは誰にも分からないという意味で、両者の溝は埋めようもないように見えます。しかし、情報化社会の到来により消費動向が大きく変容しており、消費者はマスマーケットを追求する大手企業が提供する商品に我慢する必要がなくなり、こと嗜好品に関してはクラフトビールの様な自分ならではの逸品を求め出しているとしたらどうでしょう。


事実、世界的に見て縮小するビール市場の中で、クラフトビールだけは市場を伸ばしている現実があります。その様な中、キリンHDは、自らが今まで築き上げてきたナショナルブランドの為の事業資源をそれらクラフトビールメーカーの為に開放し、連携関係を進めています。これも大手と中小企業のオープンイノベーションと見ることもできます。


また、キリンHDが目指す健康分野は、先端医薬品というよりも健康を補完する機能性表示食品といった分野であり、多分に消費者の健康志向に資する嗜好品であるといって良いと思います。サントリーやアサヒビールが海外のビール会社を買収してグローバル化を目指しているのに対して、日本国内の市場を開拓しようとする姿勢に好感すら覚えます。


FPも安直に株価を高めてキャピタルゲインを狙う短期的な視点ではなく、もっと長期的な視点で企業と共同歩調を取っていくべきだと思います。グローバル化を図るビール会社が良ければ、他の会社に投資をすれば良いことでしょう。これからの企業は、CSV(=共通価値の創出)を前提に消費者とともに社会に資する価値を創造していく時代です。


今日もありがとうございます!
http://crelife.co.jp

×

非ログインユーザーとして返信する