誰にも聞けない経営財務戦略!

ビジネスの未来を財務と心で読み解くブログです!

CREATE LIFE!
より良い暮らしを創造しよう!

http://crelife.co.jp

もう一つのM&A!

皆さん、おはようございます!
イノベーションの鍵を握るのはIT(=情報技術)であることは疑う余地がありません。
ITと既存事業を結びつけたIoT(=全てのものがインターネットに繋がる)やAI(=人工知能)等、リアルとITを融合させて行く中に新たな事業の可能性があります。



日本電産がオムロンの自動車部品子会社、オムロンオートモーティブエレクトロニクス(=OAE、愛知県)を買収します。10月末を目途にOAEの発行済株式を全株取得する計画です。自動車の制御システムやセンサーに強みを持つオムロンの技術者を取り込み、電気自動車(=EV)をはじめとした次世代モビリティーの周辺事業を強化します。


実は、日本電産のM&Aは65社目になります。産業用モーター製造専業の日本電産は、いままであらゆる分野における産業用モーターの供給を目標に、様々な産業用モーターを製造する企業を買収し続けて来ました。今回のOAEの事業領域は既存の産業用モーターとは異なる分野であり注目されるところです。


日本電産では、今後、EV向けの産業用モーターの供給に力を入れていくことから、車載回りの事業で充分な相互補完効果が見込めるとしています。車載向け産業用モーターの供給に付随するパーツをも自動車メーカーへの販路に乗せていこうという考えだと思います。産業用モーターだけでは成長に限りがあることから多角化へ舵を切ったと言えます。


本来なら、新規事業を開発するのにあたり、既存事業と関係する派生的な事業領域に踏み出すべきですが、今回の日本電産のM&Aによる新規事業への進出は少しばかり飛び地の事業領域への進出と見えてしまいます。自動車向け産業用モーターと制御システムやセンサーを掛け合わせることにより、どの様な新しい製品の創出が期待できるのでしょう。


どちらかといいますと、産業用モーターと制御システムやセンサーという周辺領域をパッケージで販売するメリットを享受しようとしているように見えます。その為か、日本電産にはないオムロンの技術者の取り込みに主眼が置かれているということが出来ます。これから日本電産が、EV生産に進出しようとする壮大な青写真を持っているなら別ですが。


やはりこれからの時代にあるべき事業連携の姿は、既存の事業に新たな事業資源を掛け合わせることにより、直接的に新たな事業創出に繋がって行くことが望ましいものと思います。既存事業にITを融合させることにより、新たなビジネスモデルに転換させるような1+1が3にも4にもなるような事業連携を模索して行くべきでしょう。


最近、ドラスティックな構造改革で注目を集める日立製作所も、産業用ロボットを使った生産システムを手掛ける米JRオートメーションテクノロジーズを2019年度中に買収するそうです。JRオートメーションテクノロジーズは、産業用ロボットの使い方をアドバイスするエンジニアリング・コンサルタント集団です。


モノがインターネットにつながるIoT事業の拡大を目指す日立製作所にとって、将来を担う試金石となる買収です。日立製作所では2016年からルマーダという名称でIoT事業を開始しており、いままで世界中のライバルであった製造業が顧客に変わって行くことになります。


このこと自体、既存事業をITと融合させることによるビジネスモデルのパラダイムシフトが起きていると言うことができます。米IBMが大型汎用コンピュータ製造やパーソナルコンピューターの製造から撤退して、お客様のあらゆるシステム周りのコンサルティングに業容を転換したのと似ているところがあります。


JRオートメーションテクノロジーズは、米ミシガン州に本社を置き自動車や航空産業の顧客網を持っており、自動化設備をどの様に導入して行けば良いかを助言できるのが強みです。日立製作所のルマーダも、お客様の工場のデータを分析して稼働率を高めたり、鉄道の運行で混雑に応じ自動的に列車の本数を変更できるシステムを持っています。


今後、工場の自動化(=インダストリ4.0)を背景に需要が急速に拡大することが見込まれる領域です。日立製作所にとって、正しくイノベーションと考えらる金の卵ともいえる事業に既存事業を転換しようとしていることは素晴らしいと思います。ただし、その新規領域を事業買収により取って付けるだけでは定着させることが難しいでしょう。


必要なのは、既存事業と買収する事業をどこまで融合させることにより新たな事業創出に結び付けられるかだと思います。その根底にあるものは、異なる事業、企業文化を背景に持つ働き手同士が、いかに互いの知を持ち寄り新たなアイディアや考え方に昇華させることが出来るかに掛っている言えるでしょう。


今日もありがとうございます!
http://crelife.co.jp



*お知らせ* amazonより電子書籍を出版しています。
企業経営においてM&Aという手法がすっかり定着しています。しかしながら、これからの時代を見据えますと必ずしもM&Aに固執する必要もありません。そんなM&Aの問題を電車の中で気軽に読める内容に纏めています。

「電車」で「サクッ!」M&A学習
「電車」で「サクッ!」M&A学習
2019-02-25
Kindle本
×

非ログインユーザーとして返信する