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2つのM&A!

皆さん、おはようございます!
未だ見ることのできない事業を追い求めて、新たな事業を創出しなければなりません。
事業とは、様々な資源が相互に補完し合って結びつくことにより一つの体を為します。
先行きが不透明だからこそ、それら事業資源を持つ企業が手を取り合う必要があります。



事務機器・用品メーカーのコクヨは、筆記用具大手のぺんてるに出資し発行済株式37%を間接的に保有することになりました。国内事業に軸足を置くコクヨと、海外進出を積極的に進めて来たぺんてるとで協業の可能性を探り、日本企業連合で海外市場での存在感を高めることを狙いとしています。


コクヨの文具関連売上高のうち海外売上は2割程度に留まる一方、ぺんてるは海外で約20ヶ所の営業拠点を構えており、海外売上高が6割強を占めています。ノートが強みのコクヨと、ペンが主力のぺんてるとでは製品の重複も少なく、ぺんてるの持つ海外の販路を活用する連携の可能性を探ることを目論んでいます。


文房具やオフィス家具の大手であるコクヨとぺんてるが組むことで相互補完効果が高まり、成長が期待されるアジア市場などでの成長を目指すことが期待されています。
今日、一般的に行われている買収先の市場を獲得し売上を嵩上げするM&Aとは異なり、相手先の海外販路という資源を通して自社製品の販売拡大という姿勢に好感が持てます。


もう一つは、米メディア大手ウォルト・ディズニーが動画配信サービスのHulu(=フールー)の経営権を完全に掌握したそうです。ウォルト・ディズニーは、動画配信最大手のネットフリックスの対抗馬とも言われているフールーを傘下に収め、動画配信事業を大幅に強化することを狙いとしています。


ウォルト・ディズニーは、動画配信をダイレクト・トゥ・コンシューマー(=消費者に直接届ける)事業と呼んでおり、次世代の事業の柱に育てようとしています。既にスポーツ番組を専門に配信するESPN+、11月より映画やドキュメンタリー作品の配信を開始するディズニー+とあわせて販売することを目論んでいます。


フールーの経営権を握ることによりコンテンツの幅が広がるだけではなく、利用者は予算や好みにあわせて各種の動画配信サービスを組み合わせることが出来るようになります。
メディアミックス(=一つのコンテンツを多様なメディアで展開する戦略)を目指すウォルト・ディズニーにとって動画配信という機能(=資源)を獲得することになります。


この2つのM&Aに共通しているのは、単純にお金で事業を獲得して業容拡大や売上を高めるだけに留まらず、買収企業と買収先企業が互いに連携することにより補完効果が認められるところです。業界の違いはありますが、新たな事業を創出するという意味においては、付加価値の高いM&Aということが出来ると思います。


今日のM&Aは、企業の短視眼的な取り組みにより、売上や利益を増やすことを念頭に同業他社を買収する形態が多いものと見受けます。グローバル市場で業界ポジションを競い合うのも良いですが、それよりももっと長期的な視点で新たな事業を生み出すことを念頭において、事業資源と事業資源を掛け合わせるM&Aを行うべきだと思います。


新たな事業の創出とは、白地のキャンパスに絵具で色を入れるのとは異なり、既存の事業資源と事業資源を組み合わせることにより、派生的ににじみ出すように事業を創り上げていくことです。その意味では、コクヨもウォルト・ディズニーも新たな事業資源を取り込むことにより、新たな可能性を創出するという意味で類似しており好感が持てます。


この2つのM&Aの相違点は、コクヨはぺんてるの37%の株式を間接的に保有するのに対して、ウォルト・ディズニーはフールーの100%経営権を掌握することにあります。
事業上の観点から相互補完効果を発揮するために他社の事業資源を取り込むことと、相手方企業の経営権を取得して保有することは必要十分条件ではないということです。


買収先企業の独自性を活かしたいのであれば、経営権を掌握することなく資本業務提携や業務提携でも充分に相互補完効果を発揮して行くことが可能です。ウォルト・ディズニーの様にフールーのガバナンス(=企業統治)まで掌握してしまい、自らの経営方針に基づき自由自在にコントロールしたいのであれば100%経営権を掌握することになります。


これからの時代を見渡しますと、経営環境のスピードが速まり、将来対する見通しが不透明であることから、経営権までを掌握せずにパートナーとして異業種企業と連携する方が機動力も高まり、リスクを低く抑えられると思います。また、企業同士が対等の立場で協働する方が、新しいアイディアや考え方が生まれ易くなると考えます。


今日もありがとうございます!
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