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銀行裁量による貸倒引当金計上!

皆さん、おはようございます!
いままでの銀行は、金融庁の指導・監督の下、金融という事業を営んできましたが、ここに来て金融庁の銀行に対するスタンスが大きく変わってきた様です。銀行が自律的に事業を営むように方針を180度転換しているように見えます。



金融庁は2019年度中にも銀行の経営を監督するための金融検査マニュアルを廃止し、ディスカッションペーパーという指針を盛り込んだ手引書をつくるそうです。具体的には、これまで銀行の貸付金について融資先の過去の財務内容に応じて貸倒引当金を計上していましたが、融資先の将来の経営リスクに応じた引当金の計上を認める方針です。


貸倒引当金とは、融資先に対する債権回収が不能になった場合に備え、貸付額の一定割合を引き当て(=貸付金から控除・減額する)、費用として計上する金額をいいます。会計上、貸倒れが起れば一時の損失になりますが、予め貸倒れが予見できる場合に、引当損失という費用をその年度の収益と対応させる形で計上することが求められています。


例えば、大きな人口減少が見込まれる地域での販売比率が高い小売店への融資や、電気自動車になると不要なエンジン部品を作る自動車部品メーカーなどへの融資について、例え黒字決算で業績が堅調な企業に対するものであっても、将来のリスクを考えて引当金を積む様なケースが考えられます。銀行の裁量で引当金を積むことが認められます。


今まででしたら、金融庁の金融検査マニュアルに基づいて、融資先企業の財務諸表や返済実績をもとに正常先債権から破綻先債権という6区分に分類して、貸したお金を回収できない可能性を考慮して、引当金を計上していました。その際に融資先企業固有の将来の見通しではなく、形式的な区分により事業を評価していたところに問題がありました。


長年、金融行政が銀行に対して護送船団方式という名の下、銀行の箸の上げ下げまで指導しながら金融秩序の維持を図ってきたことに原因があります。銀行は晴れの日には傘を貸しますが、雨の日には傘を貸さないと揶揄されるように、それでは銀行がお客様の利益を顧みず事業を営んでいることへの反省から方針が転換されるものです。


時代が大きく変わり行く中で、銀行もお客様を見て商売をするよう促がされている訳です。お客様である融資先の経営実態を深く把握し、どの様に向き合っていくか銀行が明確なスタンスを持っている必要があります。その為には、銀行の融資先に対する目利き力が大きく問われることになります。


地域に不可欠な企業だからリスクに備えた(=引当金を計上)上で支えるのか、業績が悪くなれば継続融資を断るつもりなのかで必要な引当金の額が変わらざるを得ません。銀行が引当金の根拠を合理的に説明できる必要があるのと同時に、金融庁も銀行の融資方針の妥当性を検証する能力が求められる様になると思います。


今まででしたら過去の財務諸表などに基づいて画一的に融資先企業のランク付けが為されていたものが、これからは銀行の裁量によりバンカーとして支援して行くべき企業を自由に選択して行くことが出来るようになります。これは、銀行として根を下ろす営業地域の経済に対して銀行としてどの様に関わって行くか姿勢を問われることでもあります。


最近では能力の低下が否めない、銀行の究極のノウハウである融資先に対する目利き力を改めて高めていく必要があります。現在の銀行の目利き力は、融資先に対するリスクを嗅ぎ分けることに終始してしまっていますが、本来の目利き力は融資先企業が持てる事業資源を見極めて将来の可能性を見い出して行くことにあります。


その意味では、スタートアップ企業や再建途上にある企業に投資を行うファンドの投資担当者のように、投資対象である事業の可能性を見い出し、自ら率先して経営を指南していく目利き力が銀行にも求められる様になると思います。銀行自ら責任を持って融資先企業とともに成長して行こうとする姿勢が大切です。


戦後、日本の銀行は、荒廃した日本の経済を立て直す為に、企業と一丸となって製造業の興隆に寄与してきました。見果てぬ日本の明日の姿を思い描きながら、自らのリスクで企業への融資を行ってきたものと思います。その姿勢こそ、銀行本来の持つべきバンカーとしての度量であったとことでしょう。


今回の金融庁の銀行に対する指導方針の変更は、ある意味、事業としての銀行の本質への回帰を促がすものであり、それは銀行にとってお客様へどの様な姿勢で挑んで行くかを迫られるものです。そこではやはり一人ひとりのバンカーが全人格的な目利き力によって、お客様とともに歩んで行こうとする揺るぎない姿勢と責任感が試されるでしょう。


今日もありがとうございます!
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