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割高感強まるM&A!

皆さん、おはようございます!
企業に課せられた責任は、社会の公器として事業を継続し続けることにあると思います。
その事業も社会環境の変化にともない、絶えず変革していかなければなりませんが、事業が上手くいっていればいるほど、その変革に対する認識が甘くなるものかもしれません。



企業のM&A(=合併および買収)が世界的に加熱してきているようです。
2018年度に行われた先端技術を持つ企業を対象としたM&A案件の買収価格の割高さが、リーマン・ショック直前の2007年度の水準を上回っています。世界的なカネ余りで、企業の奪い合いが激化していることが買収価格を押し上げていると考えられます。


買収価格の割高さを表す指標として、買収金額が買収先企業の利益(=EBITDA=利払前、税引前、償却前利益)の何倍かを見てみますと、2018年度のM&Aは16.9倍に対して、ITバブル時の2000年度で16.2倍、リーマンショック前の2007年度で15.2倍と上回っています。


この指標だけを見ましても、現在、ITバブルやリーマンショック前のバブル経済を超えるバブル経済であることが見て取れると思います。世界的な金融緩和(=特に日本はゼロ金利政策により)で企業のカネ余りが強まる一方、世界的な低成長により生産設備への投資が縮小する中で、企業が持つ余剰資金がM&Aに向かっていると言えるでしょう。


この様な経済環境の中でM&Aを行うことは、企業にとって3つのリスクを抱えることになると思います。一つは、バブル経済はいづれ泡と帰すことになることは歴史が教えていますので、その時にはM&Aを行った企業の財務基盤を大きく毀損することになることです。買収先企業を割高に買えば買うほど、その傷は深くなります。


もう一つは、最近のM&Aを見ていますと、事業のグローバル化の名の下で、海外市場を買うための水平展開型の案件が増えています。この様なM&A案件は、買収した後に買収先企業の経済価値を高めることは少なく、割高な買収価格を超える経済価値を創出することは不可能に近いことです。


そして三つ目は、いまの企業は既存事業を成長させ続けなければならないことは理解できますが、それと同時に時代の変革期の中で新たな市場を開拓しなければなりません。飽和した国内市場を尻目に海外市場を取りに行くことも理解は出来ますが、それ以前の問題として、新たな事業や商品の創出という観点からの投資が少なすぎると思います。


いまは良くても、やはり先行投資を行っていかなければ、先行き既存事業が衰退して行った時に、それに変わる事業がなくなってしまいます。その為の先行投資ですが、ゼロから新しい事業や商品を開発して行くのではなく、今まで蓄積してきた事業ノウハウの延長線上でそれらを考えていくべきだと思います。


企業の戦略としてM&Aに取り組まなければならないのなら、この新規事業や新商品を創出するために必要な機能を買収する為の案件を手掛けるべきだと思います。M&Aには水平統合型と垂直統合型の取り引きがあることが一般的に知られています。水平統合とは、先ほどの海外市場を獲得するようなM&Aということが出来ます。


垂直統合とは、例えば製造企業がその必要な原料を生産する企業を買収する様に、バリューチェーン(=ある製品の原料から販売までの価値連鎖)の上流、または下流の企業を買収するようなM&Aをいいます。この二つのM&Aのうち、最も多い取引が水平統合型のM&Aです。多くの企業にとって理解しやすい形のM&Aだと思います。


これからの時代を見通しますと、これら二つのM&A類型に加え、事業に必要な機能や要素を取得するための機能統合型の取り引きが重要性を帯びてくると思います。既存の事業に新たな機能や要素を付け加えて、事業を変革することも可能です。この機能統合型のM&Aを行っている企業として日本電産を上げることが出来ます。


産業用モーターを本業とする日本電産では、来るべき次世代モビリティーの制御システムやセンサー技術を獲得するべく、オムロンオートモーティブエレクトロニクスを買収しています。電気自動車向けのモーターに留まることなく、周辺事業を強化することが狙いとなっています。正しく、車載事業の技術者を取り込むべく時間を買うと言えるでしょう。


水平統合型のM&Aで既存事業との相互補完効果(=シナジー効果)を創出して行くことは難しく、買収先企業の経済価値以上の買収価格で取り引きを行うことは、買収企業にとってリスクが大きいと言わざるを得ません。その様な中で、加熱した割高なM&Aが増えていることは、これからの経済に注意信号が灯っていると言えます。


今日もありがとうございます!
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