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2つのM&A!

皆さん、おはようございます!
今年も残すところ1週間余りとなりました。1年間を振り返りますと、情報技術がリアルに様々な事業と融合しつつあることが鮮明になってきた年であった様に感じます。その中でも、トヨタ自動車とソフトバンクの業界を越えた提携が象徴している様に思います。



今年のM&A(=企業や事業の買収と合併)は武田薬品工業の7兆円にも上るアイルランド製薬会社シャイアーの買収をはじめ、大型の海外企業の買収が目立ちました。
この12月に入りましても、日本郵政による米アフラックに3000億円の出資や日立製作所によるスイスABBの事業を7000億円で買収するなどが発表されています。


日本郵政は、米保険大手のアフラック・インコーポレーテッド(=アフラック)の発行済み株式の7~8%を取得し、4年後をめどに約20%まで比率を高める方針です。
国内向けのがん保険などの商品開発で協力関係を深める他、日本全国に張り巡らされた24000の郵便局という販売網を活用して収益力を高める方針です。


日本郵政が米アフラックへの出資に踏み切るのは、現在の収益の柱である金融子会社2社を郵政民営化法上、将来的に株式の売却を進めなければならず、本業の郵便事業は需要の低迷や人手不足でサービスの見直しを迫られていることにあります。今まで、豪物流会社トール買収での巨額損失計上や野村不動産買収の白紙撤回など紆余曲折がありました。


民業を圧迫しない新規事業の創出という大命題の中で、手探りで買収先を模索してきた様に見受けますが、今回の米アフラックへの出資は、各地の郵便局網という日本郵政にとって最大の経営資源を生かせる取り組みであり、消費者が安心を享受できるがん保険の新商品開発に繋がるため、相互に補完効果が認められる良い取り組みではないかと思います。


一方、日立製作所は電気を発電所から企業や家庭に届ける送配電など電力事業を世界最大手のABBから買収することを発表しています。電力事業においては、火力発電など国内中心の従来事業で稼ぐことが難しくなる中、今後、世界市場の成長が2025年までに20%と見込まれる送配電システム事業による海外展開を目的としています。


ロボティクス事業に経営資源を集中したいスイスABB社は、電力事業は受注変動が大きく、技術面以外にも財務面でのソリューションが求められていることを事業の売却理由としていますが、日立製作所にとっては経営資源を集中するIoT(=あらゆるモノがインターネットで繋がる)技術を活用でき、海外事業所網を獲得できるメリットがあります。


送電線システムの需要は、まだまだ新興国での需要が見込まれる他、先進国でも再生可能エネルギーや蓄電池と組み合わせた安定供給網やマイクログリッド(=既存の大規模発電所からの送電電力に依存せず、エネルギー供給源と消費施設による小規模なエネルギー・ネットワーク)など、AIを活用した新たなエネルギーソルーションが望まれます。


また、財務的な見地からも、当該事業の売上高が1兆1700億円、営業利益率が約8%で上昇傾向にあることを考慮しますと、7000億円という取得価額は買収のれんに対して減損損失(=被買収会社の実際の株価よりも極端に高い価額で取得した場合に一時的に発生する損失のこと)が生じる様なことのない、妥当な価額であると思います。


日本郵政の米アフラックへの出資や日立製作所のスイスABB送配電システム事業の買収を見ていますと、決して安い投資ではありませんが、自らの事業資源と相手の事業資源を充分に見極めた上で、それらを連携させることにより新たな付加価値を生み出す相互補完効果(=シナジー効果)を期待できるという意味で、醍醐味のあるM&Aだと思います。


今年も数々のM&Aが行われて来ましたが、ただ単に新たなマーケットを獲得することにより売上を増加させるとか、財務基盤を安定させるなど財務テクニックに走った案件が目立っていました。また、買収交渉が未熟であるが故に、買収すること自体が目的となってしまい、巨額の買収のれんが発生するような取引が多かった様に思います。


ここに来て地に足の付いたM&Aが出現するようになってきたことに安堵します。いま、企業社会ではイノベーションの必要性がますます高まっています。今まで培ってきた事業の延長線上では、なかなか企業成長していくことが難しくなっています。研究開発により新たな事業を創出するのも一つの方法ですが、M&Aにより時間を買うことも出来ます。


その際に心掛けるべきことは、単にグローバル市場の中で競合優位性を保つためにM&Aを行うのではなく、各々の企業が持つ事業資源を足し合わせることにより、既存のビジネスモデルを変革し新たな事業を創出する様なシナジー効果の高い、イノベーションに繋がるM&Aを行って行くべきでしょう。来年以降のM&Aが楽しみですね。


今日もありがとうございます!
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