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微分社会から積分社会へ!

皆さん、おはようございます!
関東地方もまもなく梅雨明けですね。夏の日差しによるアスファルトの照り返しが厳しく、汗が噴き出すような暑い季節がやって来ます。それでも長く続いた梅雨空から一転して太陽が輝く、この季節の変わり目は何歳になってもこころを逸らせます。



本来、モノの価値ほど抽象的なものはないと思います。販売しているモノであれば値決めがされていますが、その価額に対する取得したモノの便益や効用が、それを手にする人によって受け止める価値がまちまちだからです。同じ価額であっても、そのモノに価値を見い出していれば安く感じますし、またその逆も然りです。


ところが、最近ではその個人差がある筈のモノの価値の幅が狭まっている様に感じることがあります。それは情報化社会の進展により、例えば「価格.com」の様な商品価格の比較サイトの興隆により、機械的に商品価格を知ることができ、最も安い価格に商品が収斂していることにもよると思います。


この場合のモノの価値は、そのモノが持つ機能や性能といった形式的な側面に照らし合わせて商品の価額と便益や効用の比較を行っているため、絵画などの抽象的な芸術作品とは異なり、個々人の価値観による差が出にくいのでしょう。その様に考えてみますと、私たちの身の回りのモノは非常に形式的な機能性を遡及するモノで溢れていると思います。


それと同じ様なことが企業の株価など企業の経済的な価値についても言えます。例えば日本人であれば誰でもご存知である「虎屋」という老舗和菓子企業があります。株式を公開していませんので正確な株価を推計することはできませんが、創業してから約400年もの歴史を刻んできた企業に対する私たちの心象的価値は高いといえるでしょう。


最近のクロスボーダーM&A(=国境を越えたM&A)流行りにより、世界中で積み上がった買収のれん(=被買収会社の取得価額が時価純資産を超える部分)が720兆円にも積み上がり、世界的な経済の低迷によりその買収のれんの時価評価換えによる損失が懸念されるようになっています。


虎屋の心象的な企業の価値も「のれん」といいますが、グロスボーダー取引による買収のれんとは同じのれんでも意味を異にしています。虎屋のそれは芸術作品の価値と同じ様な意味を持ち、買収のれんは謂わば企業としての機能を拠り所として財務計数により換算されたものであるということが出来ます。


虎屋ののれんは時の経過とともに築き上げられた正味のブランドであるのに対して、上場会社がM&Aにより取得するのれんはファイナンステクノロジー(=財務理論)に従って認めた擬制のれんであると言えます。財務理論に従えば、技術的な要点を押さえれば企業の株価をいくらでも高める(=操作する)ことが可能となります。


世の上場会社は、自社の株価を高めるために財務理論を駆使してM&Aを実行しているということができます。それはすなわち、大きな経済圏では株価という価値を最大限に高めるために鍵となる財務指標(=KPI)という一点に限りなく突き詰めて、それを改善していくという「微分」の視点がまかり通っている社会であると言えます。


企業をも一つの機能とみなし、なんでも掘り下げ分析を通して価値を見い出していくことが現代の微分社会の一つの特徴でしょう。これに対して、絵画や虎屋のような抽象的な価値を見い出していくこと、個々人の主観によりモノの価値を拡大して判断していく社会(=小さな経済圏)を「積分」社会と言い換えることが出来ると思います。


味覚や美的センスに、モノに定規をあてる様な微分発想ではなく、自らの感性によりどこまでも可能性を広げる積分発想が不可欠であることはご理解頂けると思います。
いまの社会は、モノの性能などの機能面に捉われ過ぎるあまり、仕事のあり方が課題を掘り下げ一つずつカイゼンしていく遣り方に終始し過ぎている所に問題があるのでしょう。


これからは、一つの課題を突き詰めるだけではなく、もっと大局的に物事を捉えて、その課題を改善するのみならず、その問題を根本から見直していく本質的な視点を持つ必要があります。その為には、人間として本来生まれながらにして持っている審美眼を大いに生かしていく必要があるでしょう。


その様な人間が持つ審美眼を再び開眼させて行くには、人間としての美意識を高めていくのは勿論ですが、人と人のつながりの中から、共感や信頼などを拠り所としたより滑らかにまわる社会の枠組みにして行くことが不可欠でしょう。分析的な思考法とともに、感性により独創的なアイディアを発想する思考をも取り戻す必要があります。


今日もありがとうございます!
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