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M&Aのれん!

皆さん、おはようございます!
財務諸表にある貸借対照表が何を示すものであるかという議論は、もう20年も前から為されて来た会計上のテーマであると思います。議論の大きな流れとしては、資産を取得した時の価格(=取得原価)ではなく、時価で表現して行こうというものでしょう。



世界中でこれほどまでにM&Aが企業の戦略として採り入れられることになるとは、だれも予想していなかったでしょう。M&Aは時間をお金で買うとよく言われますが、自助努力により事業を育て上げるよりも、事業を買ってきた方が確実かつスピーディーに成長を遂げられるからという意味だと思います。


確かに、その様な意味から企業ではM&Aという手法が活用されているのでしょうが、本来、企業は自ら新たな事業を創出していく存在であることを考えますと、留まることのない既存事業の成長を企図して市場勢力図を拡大してばかりいても、いつかはその市場が飽和してしまいますので、必ずしもM&Aは万能ではないことに気付かされと思います。


ただし、そうは言いましても経済社会には、止むにやまれず企業を売却せざるをえない経済主体が存在することは事実であり、その様な企業を買収すること自体を否定するものではありません。折角、この経済社会に生を与えられた企業が無くなる様なことになれば、それは社会の損失だと思いますので、その場合は積極的にM&Aを活用すべきでしょう。


大手企業の専売特許とばかり思われて来たM&Aですが、最近では日本国内だけ見渡しましても、後継者のいない中小企業の事業承継の必要から、随分と裾野が広がって来ています。こうして振り返ってみますと、ようやくM&Aも市民権を得たということが出来るのではないかとも思います。これからも、まだまだ案件数が増えていくことでしょう。


M&Aというと積極的に企業を買収するというイメージで捉えられることが多いと思いますが、実際にM&Aは企業を売却するためにあるというのが率直に言えることだと思います。敵対的に同業他社に買収を仕掛けるという映画のワンシーンに出て来そうな格好の良いM&Aは現実的ではなく、売り手にその意思がなければ実現しない現実があります。


何かの事情で企業を売却しなければならない状況になりますと、その企業は通常、投資銀行などのファイナンシャルアドバイザー(=FA)に相談することになります。そのFAは、その話しを受けて買い手企業を探しはじめる訳です。売却対象会社が上場関連企業であったりすると買い手候補企業が多く集まりますので、一般的に競争入札となります。


複数の企業による競争入札になりますと、買収対象企業に人気があればある程、買収価格が吊り上げって行ってしまうのは、世の他のオークションと事情は同じだと思います。
ただし、M&Aの世界で価格を吊り上げると言いましても、そもそも企業にはその企業固有の収益構造に基づいた理論上の適正価格というものが存在します。


それでも、そのM&Aが競争入札ということになりますと、その入札に参加している企業は、我こそはと落札することが目的となってしまいますので、他の競合企業を横睨みしながらのゲーム感覚となってしまい、買収対象企業の適正な企業価値を大幅に上回る入札を行ってしまうものです。


これは買収しようとしている企業の組織規模が大きくなればなるほどその傾向が強くなるものだと思います。経営トップが配下に対象企業を買収する厳命を下し、それを一身に背負った部下は買収を成し遂げることだけが目的と化してしまいます。買収を制約させるためには他の競合企業よりも高い価格で入札しなければなりません。


そこで何が起きるかと言いますと、買収対象企業の企業価値は変わりませんので、買収後の相互補完効果(=シナジー効果)という実際に実現するかどうか分からない将来に期待される収益を持ち出して、それを考慮した価格付けが行われてしまいます。相手先企業の時価純資産額を上回る買収価額をM&A「のれん」と言います。


最近、あるコンサルティング会社の調査によりますとM&A後の業績が買収時に想定した計画を下回っている企業が36%に達するという国内調査がありますが、実際にはもっと多いと思います。この「のれん」の総額は世界的に770兆円にも及んでおり、時価会計の流れの中で、この金額が世界中の企業の貸借対照表に計上されていることになります。


世界景気の先行き不透明感が強まる中では、この巨額な「のれん」の減損(=過大となった帳簿価格を時価まで引き下げること)リスクが高まっていることに留意する必要があります。景気が逆回りをし始めますと、一時的に巨額な損失を計上することを企業に求められるからです。やはりM&Aは売り手企業のためにあると思う所以です。


今日もありがとうございます!
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