誰にも聞けない経営財務戦略!

ビジネスの未来を財務と心で読み解くブログです!

CREATE LIFE!
より良い暮らしを創造しよう!

http://crelife.co.jp

「場」を提供するTKP!

皆さん、おはようございます!
事業というものは、時の流れにあわせて絶えず変わり行くアメーバーの様な存在だと思いますが、その様な企業が日本に少ない様に感じます。企業が一定の規模に達し、組織運営が自動的に廻り出しますと、途端に企業は保守的になってしまいます。



都内を歩いていてTKPの看板が目に留まりだしたのはいつ頃からでしょうか。10年位前には神田駅周辺に、あっという間にここそこにティーケーピー(=TKP)の看板だらけとなっていた様な気がします。TKPは、わりと老朽化したオフィスビルの空室となった部屋を借りて、貸会議室として貸し出すことを生業として創業しています。


当初こそ、地味ですがニッチな所に目を付けた、必ず需要のあるビジネスだと思っていました。都内に高層ビルの建設ラッシュが始まり、老朽ビルに入居する企業のオフィスが集約されれば、当然に部屋が歯抜け状態になりビルオーナーは困る訳です。そこに目を付けたTKPは、空いた部屋を安い賃料で借りた上で会議室として貸し出していた訳です。


また、どこの企業も、研修やセミナーで使える様な広めの会議室は、いつも稼働する訳ではありません。オフィス内に設けるよりも借りた方が手っ取り早いという需要と相俟って、急激にTKPの貸会議室は拠点数を全国に増やし、2005年に創業してから僅か12年の2017年には株式公開を果たしています。


いまや貸会議室大手の名を欲しいままにしたTKPが、サッカーJリーグ1部の大分トリニータを運営する大分フットボールクラブと資本業務提携し、同社の発行済株式の20%を1億円前後で取得し、筆頭株主となるようです。スポーツを通じた地域の活性化や雇用創出など社会活動の支援を通じて、TKPのイメージアップを図るものと思います。


今年6月には、スイスに本拠地を構える世界的なコワーキングスペースを運営する企業より、日本リージャースという日本法人を買収したばかりです。貸会議室に留まることのない様々なビジネスシーンに必要な「場」を提供する企業として、次のステージへの成長を
目論んでいるのでしょう。


いまでは貸会議室だけ見ましても、一般的な研修に使う様な会議室から、国際会議のできる同時通訳付きの会議室、役員用会議室の様なラグジュアリークラスの会議室まで、クラス分けが為されており、しかも自前でケータリングサービスまで運営しています。確かに会議後の懇親会は必要不可欠なアイテムと言えるでしょう。


それだけに驚いていられず、全国の主要地域には自営のホテルや旅館といった宿泊施設のほか、交通手段を予約するための旅行手配事業まで自前で運営するようになっています。
一貸会議室事業者であったTKPがここまで用意周到にサービス機能を備えると、もはや貸会議室事業者の域を超え、シティホテルが持つ機能とも何ら変わりません。


シティホテルが一棟の建物の中で事業を運営しているのに対して、TKPは街全体を事業拠点と考え、ビジネスシーンに必要な機能を配しているものと捉えることが出来ます。
また、コワーキングスペースの日本リージャースを取り込むことにより、単に会議や宿泊といった「場」を提供するに留まらず、起業支援などの事業も手にすることになります。


創業当初は単なるオフィスビルを転貸する貸会議室事業であったものが、いまや街づくり、起業支援、雇用創出といった社会の課題を「場」という事業を通して解決する企業にまで成長していると言えます。社会の流れを冷静に見詰めながら、適宜、必要なサービスを提供していく、その柔軟性には目を見張るものがあります。


不動産という「場」を活用したビジネスでありながら、その不動産の所有に向かわず、その時代に必要なサービスを提供することで不動産を有効活用するという意味で、ある意味これからの不動産事業者のあるべき姿を体現している様にも思えます。これからの不動産事業というものは、社会に必要とされる機能を開発して提供するものだからです。


いまの不動産会社は、東京五輪・パラリンピックで活況を呈している市場の中で、まだまだ形通りのオフィス、住居、ホテルしか開発していませんが、ただ作って終わりということではなく、それらの都市機能を有機的に結合していくという視点が欠けていると思います。それは、生活シーンにあわせてそれらの機能を見つめていないからだと思います。


それも縦割りとなった行き過ぎた企業、社会の仕組みの弊害でしょう。全体を大局的に俯瞰する視点が不可欠ですが、いまの分業化された組織の枠組みでは、縦割り型社会に横串を刺して行くことが難しいのかもしれません。しかし、いま時代が求めるものは、TKPの様に各機能を包含するプラットフォームであることは間違いありません。


今日もありがとうございます!
http://crelife.co.jp



*お知らせ* amazonより電子書籍を出版しています。
企業経営においてM&Aという手法がすっかり定着しています。しかしながら、これからの時代を見据えますと必ずしもM&Aに固執する必要もありません。そんなM&Aの問題を電車の中で気軽に読める内容に纏めています。

「電車」で「サクッ!」M&A学習
「電車」で「サクッ!」M&A学習
2019-02-25
Kindle本
×

非ログインユーザーとして返信する