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日立が日立化成を売却へ!

皆さん、おはようございます!
いまの資本主義経済は、全てお金で換算できる損得だけでものごとが判断されているように思いますが、果たしてそれで良いのでしょうか。社会の営みの中には、必ずしも損得だけでは測れない社会的な意味のあるもの、心を満たすものが存在している様に思います。



日立製作所は、インフラやIT(=情報技術)に経営資源を集中するため、グループの中核子会社で東証1部に上場する化学大手、日立化成を売却します。グループの御三家とされた企業の売却に、聖域のないグループ再編に踏み込み、国際競争に勝つ体制づくりを急ぐ日立製作所の並々ならぬ意思を感じます。


今般の日立化成の売却で、日立製作所は自らのものづくりの源流を切り離す決断をすることになります。情報化社会の流れの中で、東原社長は製造業はなくなると言い切っていますが、従来の大量生産方式の製造業から脱却し、あらゆるモノがネットにつながるIoTによりデータを集めて付加価値を生み出す今後の方針を明確にしたとも言えます。


同時に利益率重視の経営に舵を切っており、2022年3月期に10%以上の売上高営業利益率を目標に掲げ、同利益率が5%以下の事業は再編の対象にすることも明らかにしています。日立化成は、2019年3月目標の同利益率を僅かに下回り7.1%だったようです。今までにもクラリオンや日立工機などの事業が売却されています。


ポスト製造業の時代を勝ち抜くには稼ぐ力のないグループは必要がないという強い危機感が日立製作所にはあるようです。再編により事業を売却するのみならず、最近ではスイスABB社から送配電システム事業、米JRオートメーションテクノロジーズからはロボットを使った生産システム事業を買収することを発表しています。


日立製作所の動向を見ていますと、経営資源を社会インフラやIoTに集中させていることが鮮明になっています。TVコマーシャルなどを見ても、社会インフラやIoTの映像が流れており、私たち生活者の脳裏にも「社会イノベーション事業」という言葉が深く印象に残っているのではないでしょうか。


また、今回の日立化成の売却と同時に、スタートアップ企業に出資するコーポレートベンチャーキャピタル(=CVC)を設立し、約160億円の資金を運用することも明らかにしています。自動車関連で先進技術やサービスを持つ欧米企業へ投資することで、IoTの分野などで協業を目指すそうです。


企業とは、利益追求だけを目的とした効率至上主義を目指すだけではなく、社員、取引先・債権者、株主、顧客、地域、国、経営者といった広い意味での社会との関わりの中で、その社会の利益との両立を図って行かなければなりません。経済的価値と社会的価値の両立が益々これからの企業に求められて行くと思います。


いままでの行き過ぎた資本主義経済は、効率至上主義による利益追求ばかりを優先させてきてしまったが為に、人間の為の社会がその人間を後ろに追いやる結果となっています。
人間が生活して行く為には経済の存在はもちろん不可欠ですが、それは人間が社会との関わりの中で生きる動物であることからバランスを欠いてはならないと思います。


ここまで経済が発展する前の社会には、節度のある良好な人間関係が存在していましたが、いつの間にか経済成長させることを追い求めるようになった頃から、人間のコミュニティが分断されるようになったのではないでしょうか。経済合理性という名の下、効率性ばかりを追い求める為に、相手の顔が見えない社会へと進んでしまったと思います。


今般の日立製作所による日立化成の売却は、何を意味するのでしょうか。経済性と社会性の両立という意味で、バランスがとれていると言えるのでしょうか。情報技術革新という時代の変革期の中で、日立製作所が社会インフラやIoTを事業の中核に据えて行くことは、これからの社会の課題を事業を通して解決するという意味で正しい様に思えます。


一方、日立化成も株式を公開している立派な大手企業です。最近ではスマートフォンなどに使う半導体の封止材料やリチウムイオン電池用の負極材で世界的に高いシェア持っています。これらは高利益率の事業領域だと思いますが、他にも家庭用のユニットバスなどの低収益率の事業領域も抱えています。


日本から製造業が無くなるとは思いませんが、果たして日立化成が時代の流れを先取りして社会の課題を事業を通して解決しようとしているのかが見えてこない様に思えます。
必ずしも利益率の多い少ないではありませんが、少なくとも日立製作所が向かおうとしているところと、日立化成が目指しているところが同じではない様に思えます。


今日もありがとうございます!
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