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コトの価値!

昭和が工業社会でモノの欲求を満たす時代だとしたら、令和は精神社会でコトの欲求を満たす時代であり、昭和と令和に挟まれた平成の30年間は、その転換期であったということが出来るでしょう。作ればモノが売れた時代とは異なり、モノに意味が認められなければ見向きもされない時代へと転換していることが鮮明となってきています。



先日、ある知人のご紹介で、地域づくりに奔走されている住宅プロデューサーの方とお会いしました。2001年に原宿のキャットストリートで活動を開始してから20年間にわたり「生活の実像」や「本来の価値」を追求されています。それは、専門性やアカデミズムといった世界からだけでは、見い出せないものかもしれません。


彼曰く、プロデュースとは、いろんな専門分野の「間/あいだ」に何が生まれるかを大切にする観点だそうです。例えば、昔なら、地元の建築屋さんは、立派にプロデュース機能を果たしており、土地のこと、建築の作り方、建築の実務、予算の組み立て、銀行との交渉、その他諸々の家づくりに関わることを全部まとめて相談に乗っていたそうです。


窓口ひとつで、生活のことのほとんどを解決してくれる人、それを「親方」と呼んで、信頼していたそうです。「間/あいだ」に携わるいろんな人々のエネルギーが集まり、安心でよいものが安く供給されていたのです。しかし現代においては、不動産業者、設計事務所、施工業者、銀行、はそれぞれ分業し、相互に連関することがありません。


それぞれが自分のテリトリーの契約に奔走した結果、逆に分業の「間/あいだ」に見えないリスクが残ります。結局はこの見えないリスクは、建て主の負担になります。自分はリスクを持たず、リスクを他へ押し付け合うような「悪しき分業」。これが現在の家づくりの状況です。これでは人のエネルギーを結集した「いい家」にはなりません。


お話しをお聞きしていて、いまの時代が抱える問題点の的を突いていると感じました。規模の経済を追求する工業化社会においては、ピラミッド型階層組織による標準化と分業化による効率性の追求が、ある事象と事象の際を明確にし過ぎてしまい、その狭間にある無駄やリスクが全体のバランスを欠いているということが出来るでしょう。


住宅の例に拘わらず、昨今の企業による不祥事が多発していることについても、行き過ぎた企業組織の分業化が原因となっており、組織と組織の狭間で起きている問題が顕在化している様に思えます。本来、経営者がその狭間を紡いで行かなければならないのですが、経営者がその組織部門の利益代表では埋まるものも埋まらなくなってしまいます。


これからの時代、専門分化、分業化されてしまった主体を紡ぎ直す為には、全体を俯瞰した何らかのストーリーを思い描くことが必要だと思います。それは対象となる事象の歴史的な背景や文化、利害関係を見極めた誰しもが理解できる本質を見極めたストーリーです。それは多分に親方の人生哲学に負うところが大きいと思います。


また、そのストーリーの中にある、人間の生きざまとでも言う様な温もりを感じた時に、私たちは価値を見だすのではないでしょうか。人々がクラフトに惹き付けられるのも、そこに込められた製作者の思いが込められており、その製作者との遣り取りを通してクラフトに対して一層の価値を見い出して行くものと思います。


これがモノを消費していた時代に対するコト消費だということが出来ます。標準化された無機質なモノの消費が飽きられて、そのモノに込められた意味を見い出すことにこそ価値が認められる時代となっています。これがコト消費の時代と言われる所以です。その意味では、今までの社会は物事の形式的な価値ばかりが顕在化され過ぎて来たと言えます。


ファイナンスとはあらゆるモノやコトの価値を測定する技術ということが出来ます。いまの日本の銀行や企業の財務担当者などを見ていますと、事業評価に際して様々な事業要素・資源各々の資産のコスト積み上げでしか価値を判断しない帰来があります。原価積み上げとでも言ったらよいでしょうか。


しかし、事業の本来の価値というものは、それら事業要素・資源を有機的に結びつけて事業全体としての価値を引き出すことにあります。言い方を変えれば、それら事業要素・資源をを結びつけるストーリーが必要であり、それが理念やビジョンというものです。事業をモノとしてみるのではなく、コトとして捉えることが大切です。


その事業要素・資源を結びつけるストーリーが事業の無形資産と言われるものであり、本来、事業評価する際に顕在化させなければなりません。住宅にしても、クラフトにしても、それを作るのに掛ったコスト(=原価)がコトの価値ではないことは明らかです。
このストーリー、無形資産といったものが本来のブランドとしての価値です。


今日もありがとうございます!
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