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個を追求するキリンビールの成長戦略!

皆さん、おはようございます!
市場での企業の動向を見ていますと、食品や化粧品といった消費財を取り扱う企業で世の中の変化を先取りする動きが早くも出はじめている様に思います。いままでのスケールメリットを追求する動きから「個」を追求する動きへと舵を切りはじめています。



キリンホールディングスは、2021年度までの中期3ヶ年計画において、「健康」領域を成長軸とする経営戦略を発表しています。これまでのビールを中心とする飲料事業以外へのシフトを明確に打ち出しています。具体的には、世界食品最大手のネスレが強化する健康食品や健康維持・促進にかかわる事業です。


これら市場は2025年には2016年対比30%増の12兆5000億円の市場が見込まれるのに対して、ビール系飲料市場は1994年対比30%減少(=毎年1%ずつ市場が縮小)している計算となります。20~30才代の好みの多様化が著しく、大量消費を前提とした大量生産型のビジネスモデルに限界が見えはじめてきたことにあります。


健康の促進や病気の予防は社会的な課題でもあり、CSV経営(=社会課題を解決することによって、社会価値と経済価値の両方を創造する次世代の経営モデル)を追求するキリンホールディングスにとって、事業を通して社会的な課題を解決しながら持続的な成長を維持して行こうという非常に真っ当な経営戦略だと思います。


既に傘下にある協和発酵キリンの子会社である協和発酵バイオ(=協和発酵を買収する時にキリンの持つ医薬事業を統合し、別会社化した経緯がある)をキリンホールディングスが直轄する基幹事業(=直接子会社化)としていくことを発表しています。未だ売上は782億円に留まりますが、2027年までに1000億円にまで引き上げる計画です。


ネスレのサプリメント事業は、お客様個々人に不足する栄養素をネスレ側が診断して提供するカスタマイズ型の商品提供を進めており、キリンも同様のサービスを展開するのではないかと推測されます。それは、本業であるビール事業でマスマーケットを前提とした商品提供から、個性的な味わいのクラフトビールに注力していることからも読み取れます。


個性の時代を迎え、消費者はテレビの様なマス媒体を参考にせずに、むしろSNSを通じた身近な人の感想を信頼するようになり、いままでの様にナショナルブランド(=NB)の成長が望めなくなっていることをキリンは明言しています。それは、情報技術革新が産業全体に及びはじめていることを意味しています。


その様な顧客が個客となる中で、キリンは多様化するお客様のニーズに応える為、これまでのメガブランドだけではなく、国内外のクラフトビールやプライベートブランド(=PB)といった商品の品揃えを広げていくことを明確にしています。これからは少量多品種生産を目指し、生産設備の小型化、AI(=人工知能)を積極活用して行くそうです。


アサヒビールやサントリーといった競合他社が、本業である酒類事業に経営資源を選択と集中している中で、独自路線を行くキリンホールディングスの経営戦略には好感が持てます。世界的にビール市場が縮小している中で、他社は海外酒類メーカーの買収によりビール事業の拡大を急いでいます。


確かに世界No.1のビールメーカーになるという選択も今までの経済や経営の論理であればあるのかもしれませんが、今回の情報技術革新はそんな常識をも覆すような変革である様に思えます。それは、メガブランドによる規模の経済を追求するビジネスモデルは、消費者にとって大量生産品しか選択の余地が無かった過去の話しだと思います。


情報技術は、消費者ニーズを多様化させ、企業による工場生産を少量多品種生産を可能とするまでに至っています。その様な中で、敢えて規模の経済を追求する経営判断をする意味がありません。キリンホールディングスの方が、社会の動きや市場の動向を冷静に見つめている様に思えてなりません。


先端医薬開発の動向を踏まえても、これからの時代はバイオ技術の世界も情報技術と融合して、ますますオーダーメード新薬の方向に向かっています。その意味では、キリンホールディングスの健康事業への経営資源の集中は、多様化する個客ニーズに応えるカスタマイズに軸足を置いて進めていくという意味で間違いないものだと思います。


業界の中でも一目置かれるガリバーキリンですが、今般の経営戦略については同業他社ばかりでなく、異業他社も参考にすべきでしょう。メーカーがここまで明確に規模の経済を否定して、新たなビジネスモデルを追求する例を見ません。CASEで業容転換を目指すトヨタ自動車、ブリヂストンなども、どの様に経営の舵を切るのか興味深い所です。


今日もありがとうございます!
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