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買収ファンドというビジネス!

皆さん、おはようございます!
企業を買収するファンドというと、破綻した企業を蝕むハゲタカファンドをイメージした時代も過去のものとなりつつあります。日本でも、建設的に企業を再建したり、後継者難の中小企業を承継する主体として市民権を得つつあるようです。



設立から80年の名門企業パイオニアは、アジア系ファンドであるベアリング・プライベート・エクイティ・アジアからの出資受け入れにより上場廃止となります。プラズマテレビなど先端技術の開発により、常に技術先行型の経営を手掛けてきましたが、その開拓者たる自負が過信に変わり堅実に売上を上げることが出来なかったと言われています。


祖業であるAV事業やプラズマテレビ事業からの撤退を行い、カーナビ事業へ経営資源の選択と集中を図りましたが、工場への設備投資やソフトウエア開発投資の増加がフリーキャッシュフロー(=純現金収支、FCF)の赤字を招き、自助努力で経営を継続して行くことが困難なまでに至ってしまったことが原因です。


今後、パイオニアはファンドから1020億円の資金支援を受けて、子会社が持つ地図技術と自社開発しているセンサー技術を活かして、自動運転に必要なシステムを自動車メーカーへ販売する起死回生の再建を行っていく計画です。ただし、自助努力でその実現は難しい為、世界で展開するファンドからの経営支援も不可欠となっています。


一方、昨今、投資ファンドが地方旅館を積極的に買収しています。香港系のオデッセイ・キャピタル・グループは日本の旅館に特化したファンドを新設し、また、米ベインキャピタルは傘下の大江戸温泉物語グループを通じて旅館の買収を拡大して行く計画を持ちます。日本のオリックスなども、老舗旅館の買収による再建で実績を上げています。


ファンドによる地方旅館の買収が盛んになっている背景には、客室数の少ない業績不振の旅館が多く、銀行から借入を行う余力が乏しい為に施設の更新投資が滞り、それがまたお客様が古い施設を敬遠するという悪循環に陥っていることがあります。また、後継者不足に悩む旅館が増えていることも拍車を掛けているようです。


本来、経営不振先の旅館を支えるはずの地方銀行にその余裕が無くなっており、むしろ積極的にファンドに投資先である旅館を持ち込んでいることも、その理由として挙げられます。地方の観光地を訪れるインバウンドが増えていることも、ファンドにとって旅館に投資を行いやすいインセンティブとなっているとも言えるでしょう。


どの時代にも経営不振に陥る企業は存在するものです。高度経済成長下でしたら、銀行主導で業界再編や企業再建が行われていましたが、現在ではそこまで手を染める銀行が無くなっています。銀行自体にリスクを獲る余裕が無くなってしまっていますし、時代の端境期の中で経営不振の企業が増えていることにもよると思います。


同じ資金の出し手でありながら、なぜファンドは経営不振の企業に投資ができるかといいますと、金融事業者としての事業の構造が銀行とは全く異なるからです。ファンドビジネスは、基本的に経営不振企業への出資により経営権を掌握して、会社を再建させることにより株価を高めることを生業としています。


その意味では、再建できるかどうか分からないリスクを抱え込むことになりますので、そのリスクに対するリターン(=報酬)は高くなければ見合わないということになります。
そのリターンとは、買収した企業の株式の価値を高めて転売するか、高い配当を享受することになります。そもそも転売が見込めない企業への投資は為されないことになります。


また、経営不振先は自助努力により経営を立て直して行くことが出来ない企業であることから、ファンドは資金提供とともに経営再建を主導していくことを前提としています。
この経営再建のノウハウがファンドの良し悪しを決定する要因であることは間違いありません。問われるのは、長期的な視点で如何に事業を再生させて行く手腕だと思います。


一昔前に良く聞かれたのは、ファンドが短視眼的に外科療法的に事業を切り売りすることにより目先のキャッシュフローを改善して、テクニカルに株価を高めていく手法です。
いまも全くないとは言えませんが、ファンドビジネスも競争が厳しくなっていますので、
長期的な視点で事業を改善して行くことが不可欠になっています。


ファンドの資金の出し手は、年金や銀行をはじめとする機関投資家です。世界的な低金利政策によりお金がファンドに集まり易くなっています。ファンドには、これら企業再建を目的とする他、スタートアップ企業に投資するものもあります。これからのイノベーションを支える資金の出し手として、リスク許容度の高いファンドの存在も不可欠でしょう。


今日もありがとうございます!
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