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変革期の生きたお金の使い方!

皆さん、おはようございます!
金融(=ファイナンス)の世界を見ていますと、2008年のリーマンショック以来、お金がお金を生む様な倫理観に反する様なマネーゲームが自嘲気味となり、真にお金を必要とするところへ目が向き始めている様に思えます。



先進諸国の経済が低成長の時代を迎え、世界的に見て低金利政策が採られていますが、一向に景気が浮揚しないのは、産業構造がこれまでの工業化社会から情報化社会へと移行しつつあるからだと思います。情報化社会では、これまでの様な生産設備への投資が必要ありませんし、それと同時に既に消費者にモノが行き渡り新たな需要を刺激しません。


行き場を失ったお金がどこへ向かいはじめているかと言いますと、スタートアップ企業、事業再生、M&Aなど、いずれも新たな時代への産業構造改革に必要な資金として活用されはじめています。ただし、カネ余り現象のせいで資金の出し手の投資リスク許容度が緩んでおり、バブル経済の様相を呈している様にも見えます。


投資に先立ち投資対象である企業の事業性をきちんと評価しているのでしょうが、マーケット全体を俯瞰しますと、資金調達のハードルがかなり下がっているようです。社会的に見れば、産業構造の転換期に充分な資金が市場に還流するのは望ましいとも言えそうですが、一定のモラルを維持しないとその後に反動があることも忘れてはいけません。


いま大手企業が潤沢な内部留保を背景にM&A市場が空前の活況を呈しています。武田薬品工業によるアイルランド製薬会社シャイアーを7兆円で買収した事例などは、まだ皆さまの記憶にも新しいと思います。武田薬品工業の新薬特許切れを背景に、シャイアーの安定した市場と財務基盤を手に入れたかったことが狙いとしてあります。


武田薬品工業としては、企業としての存続をかけた苦渋の選択だったと思いますが、盤石な財務基盤を手に入れたとしても、研究開発により新薬を世に送り出して行かなければなりません。いま製薬業界ではゲノム新薬が望まれているはずですが、シャイアーと事業を統合することによりどの様な新薬を手掛けていくかが明らかになっていません。


また、フィットネス事業を営むRIZAPに至っては、本業と全く拘わりのない業績の悪化しているメディア、住宅・不動産、アパレル、雑貨販売、CD・ゲームソフト販売といった異業種企業を85社も買収したことが原因で、改めて本業への回帰を強いられている状況です。これなどは、ファンドのような再生事業を目論んでいたのでしょうか。


負ののれん(=純資産額より安い価額で買収した時に発生する差額を負債に計上すること)を活用した錬金術により、業績の悪化した企業を買収した時に負ののれん償却益を計上し、買収企業を再建した後に改めて売却益でも計上することを目論んでいたのでしょう。自らの力量以上のことを行ってしまった結果だと思います。


いずれもカリスマ経営者だから為し得たことだと思います。カリスマ経営者といえども生身の人間ですので、これらM&Aに対する精神的な重圧は相当のものだと思います。
しかし、その重圧よりも自らの企業の存続に対する重圧の方が勝ってしまっていたのではないかと思います。だから、M&Aという重圧をもものともせずに選択したのでしょう。


本来、武田薬品工業であれば、新薬開発力の高い企業を買収すべきですし、RIZAPであれば本業であるフィットネス事業に関係の深いヘルスケア事業に集中してM&Aを行うべきだったと思います。その様にして、自らの事業を少しずつ変革していくことが、これからの時代に望ましいM&A戦略だと思います。


武田薬品工業にしてみましたら、自らの会社の財務基盤をも遥かに上回る7兆円もの投資を行ったのでは、今後の機動的な事業展開の足枷となってしまいます。あまりにも短期的な視点で財務内容を良く見せたいという衝動に走ってしまった様にも見えます。
その様な意味では、RIZAPのM&Aとあまり変わらないと言えます。


企業のM&Aであっても、それは経営者という個人が行う経済行為です。お金(=財務)ありきで物事を判断しても、何ら付加価値を生みません。企業は社会の課題を事業を通じて解決することにより社会的価値を生み出し、その結果として企業価値に繋がっていくものだと思います。時代の変革期の中で、どの様な付加価値を生み出すかが大切です。


ファイナンス(=お金)とは、結果的に資産価値を導き出す為の工学であり、人間が経済活動を行っていく上で必要な判断材料を提供してくれる技術的な手段です。その様なファイナンスを目的化してしまってはいけません。時代の変革期を迎えて、事業を想像し、それを創造していく過程でファイナンスは私たちに有効な手段を提供してくれるでしょう。


今日もありがとうございます!
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