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ブリヂストンとアサヒビール!

皆さん、おはようございます!
20年前とは異なり、今ではM&A(=企業の買収と合併)を経営戦略に取り入れない企業がないくらい一般化されています。当時は、まだまだM&Aは感情的に受け入れ難いものという意識が強かったのですが、今では取引金額も件数も増加の一途を辿っています。



全く業界の異なるブリヂストンとアサヒビールのM&Aについて取り上げてみたいと思います。とはいいましても、決してこの2社が経営統合をする訳ではありませんのでご安心ください。各々、海外企業の買収を行っていますが、両社のM&Aに対する戦略が全く異なることに目が留まり、是非ともご紹介してみようと思います。


アサヒグループホールディングスは、英国で300軒のパブやホテル事業を手掛けるフラー・スミス&ターナー社より高級ビール「ロンドン プライド」など売上総額150億円規模の事業を370億円で買収することを発表しています。フラー社は事業売却後も当該ビールを引き続き自社で販売するほか、スーパードライなども取り扱う計画です。


アサヒビールには、高級ビールのグローバル展開を成長戦略に掲げており、2016年以降、合計で1兆2千億円を投資してベルギーのビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブよりペローニ、ピルスナーウルケルなどと併せて国際展開を進め、成長に弾みをつける狙いがあります。


買収効果を追い風に、2018年12月期の欧州事業の売上高は前期比20%増の約4500億円、事業利益は5割増の770億円の見通しであるそうです。ただし、欧州事業で最低でも1兆2千億円の投資を行っている訳ですから、単純に利回りを計算しますとMaxで6.4%にしかなっていないことに触れておきたいと思います。


一方、ブリヂストンは、地図サービス世界大手トムトム(=オランダ)の子会社でネットを利用した車両管理サービスを手掛けるトムトムテレマーケティングを約1100億円で買収することを発表しています。同社は、車両に設置した通信機器から運転手や走行状況のデータを収集し、安全運転や効率的経路選定などを支援するサービスを手掛けてます。


ブリヂストンはあらゆるモノがネットに繋がるIoTを活用し、タイヤの売り切りからサービス化へのシフトを急いでいます。今回の買収により運送会社へのタイヤ販売と同時に、運行効率化サービスの開発・提供に繋げる狙いがあります。タイヤの最適交換時期を把握するサービスを鉱山用機械や商用車向けに提供する計画を持ちます。


ブリヂストンはタイヤ業界では世界シェア首位にあります。仏ミシュラン、米グッドイヤーを加えたトップ3社が世界シェアの過半数を占めていたが、近年は4割を切る水準まで落ち込んでいます。自動車産業を取り巻く100年に1度の変革の波がタイヤ業界をも突き動かしていると言われています。


ブリヂストンも、アサヒビールと同様に世界市場を覇権すべく同業他社を買収する戦略も採れるはずです。しかし、2007年に米再生タイヤ大手バンダグを1000億円で買収して以来、行っていません。ブリヂストンとアサヒビールのM&A戦略に対する考え方の違いはどの様なところにあるのでしょうか。


ブリヂストンは、自動車業界でいま現に起きている「CASE(=つながるクルマ、自動運転車、カーシェアリング、電気自動車)」「MaaS(=モビリティ アズ ア サービス)」という地殻変動を目の当たりにして、クルマの販売と一緒にタイヤを販売するという、今までの単純なビジネスモデルに対して相当な危機感を寄せているのだと思います。


仮に同業他社を買収して市場シェアを高めたところで、タイヤを使用するクルマの概念が「移動手段」へと変容する中で、自らも製造販売からサービスへと舵を切らねば、会社の存続すら危うくなると考えたのでしょう。イノベーションとしてのM&Aです。実際に広義の自動車関連産業が、将来どの様に収斂していくのかなんて誰にも分かりません。


それにも関わらず、将来のあるべき姿をIoTと描き行ったM&Aの英断は、経営者にとってなかなか出来ることではないと思います。日本の企業の場合、現実となっていない将来像としてのビジョンを社内や株主に説明して理解を得ていくことの難しさは想像に難く思われます。誰もその論拠を持ち合わせることは出来ないからです。


これに対してアサヒビールのM&Aは、将来に向けた付加価値を生んでいません。世界の市場規模が減少傾向にある中で、パイの取り合いをしているだけです。むしろ、その様な中で条件の良い買収価格を提示したから取り引きが成立したのかもしれません。情報化社会において、ビールという商品も何時までも消費され続けるとは限りません。


今日もありがとうございます!
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