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事業トランチング!

皆さん、おはようございます!
ほんとうに今年は季節の移り変わりが早いですね。
6月下旬に梅雨が明けたと思いましたら猛暑が続き、8月のお盆を過ぎれば既に秋めいているではないですか。朝、夕のスズムシたちの鳴き声がいっそう秋を感じさせます。



「事業トランチング」という聞き慣れない言葉を敢えてタイトルに冠してみました。
ファイナンスの証券化スキームにおいてトランチングという言葉がありますが、それは貸借対照表の右側(=負債+資本)の世界の話しなのですが、左側(=資産)にもトランチング構造があって然るべきという観点からの造語です。


ファイナンスでトランチングと言いますと「証券化商品を、リスクレベルや利回りなどの条件で区分したもの。 特定の条件により区分することをいい、区分された各部分をトランシェという」と説明されます。証券化商品は、金融機関が持つ住宅ローン、自動車ローンなどのローン債権資産を裏付けとして資金調達する方法です。


最近では不動産証券化などにも随分と広がりを見せています。それらの収益や担保の裏付けとなる資産を特別な法人(=ビークルといいます)に移して、その法人が資産の購入資金を調達する訳です。資金調達方法として、まとめて一律の条件で資金を調達することも出来ますが、資金の出し手によって求めるリスクと利回りが異なります。


そこで考え出されたのが、資金の出し手が要求するリスクと利回りの関係毎に大まかに調達条件を区分することです。具体的にはシニアローン、メザニンローン、エクイティの3つに区分することが出来ます。シニアローンは通常の銀行借入と考えて下さい。メザニンローンはシニアローンより返済が劣後するリスクを持つ代わりに利回りが高くなります。


また、メザニンローンはエクイティよりも優先的に返済が為されますので、エクイティが一番リスクが高くなります。一般の会社の資本金と同じ様に捉えて頂いて結構かと思います。この場合、資金調達を3つの区分にトランチングし、3つのトランシェ構造を持つといいます。これがストラクチャードファイナンス(=仕組み金融)というものです。


私は、同様のトランシェ構造の考え方を貸借対照表の資産側でも構築することが可能だと考えています。具体例で申しますと、某メーカーに勤めておりました時に、県が造成した広大な工業団地に予定していた工場建設の話しが白紙化となった時のことです。造成地売買契約に照らし合わせて、県も会社側も一歩も譲らない硬直状態が続いていました。


その当時は、未だいまの様にECが活況になっておらず、ちょうど物流施設大型化に向けた夜明け前の状況にあったと思います。ちょうど外資物流ファンドが日本へ上陸し始めた頃合いであり、国内物流会社を含めて数社が、その計画用地を買いたい、借りたいという話しが舞い込んできました。その場で、直ぐに単純に売却、賃貸することも出来ました。


しかし、バブル経済最盛期に200億円もの価格で購入した土地がデフレ経済の中で同一価格で売れる訳ではなりませんし、メーカーが未来永劫、不動産賃貸業を行っていく訳にもいきません。そこで考えたのが「事業トランチング」です。登場人物は、外資系物流ファンド、国内物流会社、そして点在した古い物流倉庫で製品管理をしていた自社です。


外資系物流ファンドに土地を売却することを考えたのですが、単純に土地だけを売却していたら買い叩かれるだけになり売却損が発生してしまいます。そこで、その土地を借りたいと言っていた国内物流会社にテナントとして入居して貰うことにより、外資ファンドの利回りを確定させることを条件として、売却損の発生を回避することです。


国内物流会社にとっては、大規模な建物を自分達の希望に従って資金調達の心配をせずに建物を建てて貰えますので、こんなに願ったり叶ったりの条件はない訳です。しかも、自社メーカーの点在する物流施設の製品管理を一括で請け負えるお土産まで付けて、これまた請負先を自ら探すリスクを回避し物流事業の利回りまで確保できる訳です。


まるでわらしべ長者の様な話しですが、この時に考えましたのは、同じ物流関係事業者とは言いましても、各々自社の役割りが異なり、事業を営む上でのウィークポイントを必ず持つ訳です。餅屋は餅屋です。そのウィークポイントを軽減すべくトランシェ構造を設けることにより、事業全体の収益力を最大化することが出来た訳です。


今の社会は何かと専門分化されてしまっており、各々の利害関係者同士が直接協働しようにも利害が相反し、なかなか調整が難しい点もあろうかと思います。しかし、各々の企業が利潤追求する際に、全体を俯瞰して利益を適切に配分させる視点も必要でしょう。
当該工業団地は、いまや産業団地と名称を変更して拡大繁栄しているそうです。


今日もありがとうございます!
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