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「空箱」上場の問題点!

皆さん、おはようございます!
新たに事業や商品を創出するということは、持てるノウハウ、技術、アイディアといったものを思いつきで提供するに留まらず、再現性がなければなりません。それは商品として確立されているという意味もありますが、事業として反復し継続していく為に必要だからです。



企業買収のみを目的とした特別買収目的会社(=SPAC)と呼ぶ特殊な企業の上場が米国で大きなブームとなっています。ところが米証券取引委員会(=SEC)の監視強化により4月の新規株式上場(=IPO)数が13件と、直近ピークの3月に比べて9割減に落ち込んでいます。投資家保護の観点からは欠陥が多い投資対象と言わざるを得ないのでしょう。


SPACは未公開企業を買収することのみを目的に設立した、いわば「空箱」のような企業です。未公開企業と合併し、買収先が存続会社となって上場会社となります。金融緩和によるカネ余り現象で、大量の資金がSPACに流入しています。2020年は米国における全IPO数の約半分にあたる248社が上場し、9兆円もの資金を集めたと言われています。


空箱上場の最大の利点は、時間をかけずに上場できることであり、SPACに買収されると1年以上かかる上場準備期間を数ヶ月に短縮できるというメリットがあることです。しかし、2020年にSPACとの合併で株式を上場した企業をみると、実に4割もの企業がSPAC上場時の株価を下回っており、株価が低迷しているケースが目立っているようです。


SPACと合併する買収先の事業会社は、直近まで売上がゼロであることも珍しくなく、数年先までの業績見通しを開示することで、高い成長可能性をアピールすることで市場から資金を呼び込んでいると言えます。しかし、留意すべきは、その業績見通しを水増しすることも可能であり、蓋を開けてみたら実際の業績がともなわないということもあり得る訳です。


この点に関してSECは、合併時に公表する業績見通しについて「虚偽」が見つかれば、法的手続の執行可能性があることを指摘しています。さらには、買収先が正式な上場審査を経ずにIPO出来てしまうところにも、本来の上場基準を満たさない新興企業の上場を許してしまう「裏口上場」としてのリスクが内包しているという問題への指摘がなされています。


通常のIPOでも、上場企業の計画が未達であった場合、投資家から訴訟を受ける可能性があります。本来、定められた基準に従って上場審査が為されていたら未然に防げる問題であるにも拘らず、安易にSPAC上場を認めてしまったのは、株式市場における上場企業が減少していることを受けて、IPO活性化に取り組んできたSEC自身の問題でもあります。


規制当局であるSECがSPACの情報開示に対して監視を強めていることが、SPACを通じた株式上場の優位性を薄れさせているとも言えます。多くのSPACは上場2年以内に買収先と合併できなければ、会社を解散することになっている反面、合併できればSPACの運営者たちは多額の成功報酬を貰うことになり、買収を急ぐインセンティブが働きます。


このことは、SPACの運営者が買収を急ぐあまり無理をして高値で買収先と合併する可能性を意味しており、それは投資家の利益と相反する行為であるという問題もあるでしょう。
日本でもSPCA上場の是非について審議がなされているようですが、買収先をSPACが買収する際に、通常の株式上場審査基準に則った審査を行うべきことを明確にすべきです。


今日もありがとうございます!
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