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住友商事、北欧駐車場事業の買収!

皆さん、おはようございます!
最近、企業間の連携が増えているように感じます。今までなら独自に行ってきた新たな事業の創出、既存事業の磨き上げですが、一層の果実を得る為には自前主義では限界があります。一方で、事業に必要な機能を補完するためのM&Aも見受けられます。



住友商事が北欧で駐車場運営事業に乗り出します。欧州の駐車場運営大手Qパーク・オぺレーションズ・ホールディングス(=オランダ)から、同社傘下の北欧事業会社を約500億円で株式を100%取得して完全子会社にするそうです。当該北欧事業会社は北欧3ヶ国で駐車場シェアの2割に当たる37万台分を管理する北欧最大手です。


いままで住友商事はマツダやトヨタ自動車の海外販売代理事業に自動車ビジネスの軸足を置いてきましたが、自動車業界でMaaS(=モビリティ・アズ・ア・サービス)への取り組みが加速していることから、今後はクルマを使うサービス事業に軸足を置き変える計画です。伊藤忠商事、三井物産も同様の動きを採りはじめています。


既に住友商事は、2018年11月にスウェーデンのストックホルム市で、電気自動車300台を使ったカーシェアリング事業を営む子会社を100%出資で設立しています。
今回の北欧における駐車場運営事業の買収は、このカーシェアリング事業におけるサービス拠点として駐車場を使い、相互補完効果を生み出すことを企図しています。


一方、大和証券グループ本社は、有料老人ホームや介護サービスなどを手掛けるオリックス・リビングの全株式をオリックス不動産から約500億円で買収し子会社化します。
オリックス・リビングは、オリックス不動産の企業内新規事業として誕生し、首都圏や関西圏を中心に32の老人ホームや高齢者向け賃貸住宅を運営しています。


大和証券グループ本社は、中期経営計画で不動産関連事業の強化を掲げており、2014年にはヘルスケア施設に特化した不動産投資信託(=J-REIT)を組成しています。
その不動産のアセットマネジメント(=投資用資産の管理を実際の所有者・投資家に代行して行う業務のこと)ノウハウの強化に繋げることが買収の狙いとしてあります。


オリックス・リビングを子会社化することで、運用資産の規模を拡大するとともに、高齢者を中心に大和証券の顧客向けにも施設を案内し、サービス内容の充実に繋げるという相互補完効果を享受することができます。介護施設や老人ホーム買収の動きは、損害保険会社など金融業界にも広がって来ています。


武田薬品工業、サントリーなどが規模の経済を追求して数兆円もの買収資金を支払い海外の市場を手に入れようとする中で、この住友商事と大和証券グループ本社のM&Aは、新たな市場を強化する為に、既に自らが持ち得ている事業資源を補完する機能を買収して、相互補完効果を高めていこうとする戦略が明確です。


この既存事業を核として、そこから滲み出すように事業に必要な機能を付け加えて行くM&Aに好感が持てます。各々の会社の本業ではない新規事業だからということもあるのでしょうが、事業を創り上げるとはその様なことを言うのではないでしょうか。事業とは、様々な要素や機能が一体となって全体を構成するものだからです。


武田薬品工業やサントリーの様に本業の中核事業を統合するM&Aでは、細部にわたり相互補完効果を見い出して行くには取り引きの規模が大き過ぎ、自らが必要としない事業をも買収先企業から買うということに成りかねないといって良いでしょう。その様なM&Aは、市場が成熟した業界内で行われる再編であるとも言えます。


いま社会から求められているのは、情報技術革新を契機として変化する社会に対して、新たな事業を創出することにあります。先行きが不透明な大きな変革期であるからこそ、自前主義で新たな事業を創出して行くには限界があり、それを克服する為に他業界、業界他社と連携して行く必要があると言えます。


考えてみれば、ビジネスとは他者との関係を構築して行くことに過ぎません。その関係を構築して行く中で、自らの社内の経営資源として留めておきたい要素、機能の度合いに応じて、今般の住友商事や大和證券グループ本社が手掛けたM&Aの様な事業に必要な機能を取り込むこともあり得ると思います。


そこまでの必要がなければ、業務提携(=アライアンス)という形で相手先との取り引きを揺るぎないものにしていけば良いことです。業界再編型のM&Aは、企業の存続を掛けた取り引きの意味が強くなりますので、いま社会に求められているものとは異なります。変革とは、既存の事業を新たな事業へ改編して行くことだからです。


今日もありがとうございます!
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