誰にも聞けない経営財務戦略!

ビジネスの未来を財務と心で読み解くブログです!

CREATE LIFE!
より良い暮らしを創造しよう!

http://crelife.co.jp

第一三共、英製薬会社との新しい連携!

皆さん、おはようございます!
M&A(=企業の買収と合併)の歴史を紐解きますと、規模の経済を享受するM&Aが1800年代に米国の石油業界や鉄道業界などで行われてきています。必ずしも規模の経済が競争優位に繋がらない現代において、新しい企業連携が生まれつつある様です。



製薬会社の第一三共は、開発中の抗がん剤について、英製薬大手のアストラゼネカと提携すると発表しています。臨床試験(治験)や販売を共同で手掛け、第一三共は対価として最大で7600億円を受け取るそうです。この発表を目にした時に、いままで行われて来た企業間のM&Aも過去のものとなり、新たな時代を迎えているものと感じました。


最近では、武田薬品工業によるアイルランド製薬大手シャイアーの7兆円による買収が話題となったばかりですが、今回の第一三共の取り組みはとても好対照という印象を与えます。企業を丸ごと飲み込む、規模の経済を追求するM&Aとは異なる、開発中の新薬に限定した木目の細かい堅実的な企業間連携として好感が持てます。


どちらかと言いますと、今までのM&Aは資金力にものを言わせて、同業他社の市場を買い取り(=水平統合)企業規模を拡大することによりスケールメリットを追求する形の取り組みが多かったと思います。ところが現代の様に売り上げが右肩上がりに上がるとは言い切れない時代においては、必ずしも合理的であるとは言えません。


今般の第一三共のアルトラゼネカとの連携の背景には、先進国の高齢化でがん治療薬市場が伸びていることもありますが、新薬であるバイオ医薬品の開発に数千億円単位の費用を要するという事情があると思います。それだけの資金を投下すのだから、新薬開発をより確実なものにしていきたいという意識が働いていると思います。


アストラゼネカはがん治療薬の開発と販売に豊富な経験があることから、第一三共としても単独で製品化するよりも、新薬としての事業価値を高められると判断したのでしょう。
具体的な提携内容としては、今後の治験などの費用を両社で折半する他、販売について日米欧を第一三共が行い、アストラゼネカがそれ以外の地域で販売する権利を得ています。


アストラゼネカにとっては、日米欧以外の国々で新薬を販売する権利を得られるだけではなく、第一三共が持つ抗体薬物複合体と呼ばれるバイオ医薬技術に対する関心が高かったからと言えるでしょう。両社にとってWin-Winの関係だから、今回の新薬事業における連携が成立したものと思います。


もし、これが第一三共とアストラゼネカによるM&Aであったらどうだったでしょうか。
確かに今回の対象となっている新薬に限っていえば、事業連携と同様の効果を得られると思いますが、新薬以外の事業についても統合していかなければならなくなります。
しかも、その他の事業についても相互補完効果を得られるかどうかは不透明です。


また、両社で重複する世界各国の販売拠点や管理部門については統廃合を余儀なくされるでしょう。日本と英国という歴史も文化も異なる企業同士が統合するためには、従業員の個人的な感情も含めた軋轢や摩擦も生じてくると思います。それらを乗り越えて経営を統合していくのは至難の業であり、時間も要すると思います。


視点を変えてみますと、これからの企業というものは、企業の規模よりも質が大切になります。一企業市民として企業理念や企業としての哲学を明確に打ち出すことにより、消費者(=生活者)と共生していく時代とも言えます。そのような中で、資本の論理により行われるM&Aというものは必ずしも時代にマッチしているとも思えません。


これからの時代、ある新しい事業を起していくためには、その事業の意義に共感する企業や個人がその都度、プロジェクトを組成し事業化を行い、その目的が達成されたら解散する方式になっていくと思います。企業が自前主義で全ての事業資源を整えていたら、以前の様に必ずモノが売れる時代と異なり、リスクが大きく効率が悪いと言えるでしょう。


自動車業界のCASE(=つながるクルマ、自動運転、カーシェアリング、電気自動車)への取り組みを見ても、企業の垣根を越えてIT企業、スタートアップ企業などが連携しながら新たな事業化への取り組みを進めています。それは、世にない事業を生み出していく為には、知見のある主体が集まり新たな知識を創出していく必要があるとも言えます。


今般の第一三共の事業連携は、これからの時代のM&Aという枠組みを超えた新たな取り組みとして、様々な業界や企業で採り入れられていくことでしょう。決してM&Aがなくなる訳ではありませんが、それは単に規模の経済を追求するためのものではなく、事業を行うために必要な機能を取り込むためのものとなっていくことでしょう。


今日もありがとうございます!
http://crelife.co.jp



*お知らせ* amazonより電子書籍を出版しています。

「電車」で「サクッ!」M&A学習
「電車」で「サクッ!」M&A学習
2019-02-25
Kindle本
×

非ログインユーザーとして返信する