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社会制度としての会計のあり方!

皆さん、おはようございます!
最近の企業を見ていますと、短期的な業績に捉われ過ぎている様に見えます。それは、社会が実物経済よりも金融経済を尊ぶ風潮にあるからだと思います。よく考えて見れば、金融経済は実物経済を発展させるための手段であり、それ自体は付加価値を生みません。



いよいよ日本でもリース取引について、全てのリース資産を貸借対照表に計上(=オンバランス)する会計基準への変更が余儀なくされているようです。いままででしたらリース取引のうちオペレーティングリースといわれるリース資産の耐用年数の一部の期間のみリースで借り受ける取引は、そのリース料を全額費用計上することが出来ました。


今回のリース会計基準の見直しにより、オペレーティングリースについても当該リース期間に応じたリース資産価額とそれに対応するリース料としての債務額を全額、資産と負債に計上することを迫られます。これにより、損益計算書の利益に与える影響はありませんが、資産と負債を計上することになりますので、ROAなどの資産効率が悪化します。


ROAとは総資産利益率を表し、利益を総資産額で除した数値であり、事業主体がどの位の資産を活用して利益を生み出したかを見る指標です。同じ利益額の事業主体があったとしても、より少ない資産で利益を上げた事業主体の方が少ない資本(=資産)で効率良く利益を稼ぎ出したことになりますので評価されることになります。


今般、どうしてリース取引に関わる会計基準を見直すに至ったかといいますと、いま米国会計基準とEUを中心とする国際会計基準と日本の会計基準を統一して行く流れの中での変更ということになります。既に米国会計基準と国際会計基準では、リース取引を資産と負債に計上することになっており、日本だけが費用として計上しています。


資金が国境を越えて自由に世界を駆けまわるグローバルな金融が一般的となっている今日において、投資家から見れば各地域の会計基準の違いにより財務諸表で表される利益額や資産額が異なっているのでは何かと不都合です。そこで、究極的な話し、会計という言語を世界で統一してしまおうという潮流になっています。


ただし、欧米会計基準と日本の会計基準では大きな隔たりがあり少し時間が掛っている訳です。欧米の会計基準の根底にある考え方は、財務諸表のうち最も重要なの報告書は貸借対照表であり、その貸借対照表を出来る限り時価で表現していこうというものです。これに対して、日本は損益計算書こそ最も重要な報告書であるとしている点が異なります。


会計理論上もいろいろな解釈ができますが、一言で申しますと欧米はファイナンスの考えを取り込んだ未来志向の財務諸表を志向しているということができます。現在ある資産を活用してどの様な事業を営んで行くかという視点が色濃く出ていると言えます。日本の会計基準は、過去の結果としての業績である利益計算を精緻に行うことを重視しています。


社会科学としての会計理論は、過去の会計思考の上に世の中の変化に対して演繹的に理論を積み上げていく学問であるということが出来ます。急激に欧米の考え方を採り入れようにも、理論的に積み重ねてきた土台があるために急には変えることが出来ません。社会の実態にあわせて解釈の方法を変えていくことになると思います。


ユニリーバという英蘭多国籍企業をご存知かと思います。日本でもシャンプーなど日用品の製造販売を行っているグローバル企業です。このユニリーバが敢えて四半期決算を行っていないことはあまり知られていないことだと思います。長期的な視点で経営に取り組むユニリーバにとって、短期的な視点を持つ投資家に対する牽制であるそうです。


ユニリーバは、社会市民企業として事業を通して社会の課題を解決しようと本気に考えてきた歴史ある会社です。その様な企業が事業を軌道に乗せていく為には、短期的な視点で一喜一憂していては上手くいくわけがなく、単に制度としての四半期決算という基準に迎合することなく、企業自らの姿勢を貫く姿は素晴らしいと思います。


私たちの社会は、なにかと規則に縛られ無意識のうちにそれに迎合しながら人々は日々の生活を送っているのだと思います。しかし、その規則というものは、個々人が自らの考えに基づき行動した結果を拠り所に最大公約数的に集約したものに過ぎません。いま時代のに問われているのは、何ものにも迎合しない個々の哲学や信念を表現して行くことです。


その結果として、社会に新たな意味が付け加わることになります。その意味では、会計も悪戯に各国の会計制度を統一するのみならず、事業主体が自らの哲学と信念に基づき財務諸表で業績や財政状態を表現できる様に、一定の選択余地を残して行くべきかと思います。各事業主体の財務諸表の相対比較を可能とするだけがその目的ではないはずです。


今日もありがとうございます!
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