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米新興建設カテラ破綻の教訓!

皆さん、おはようございます!
政府が掲げてきた地方創生も、新型コロナ禍の隅に追いやられ色褪せてきた様に感じます。数兆円もの予算を投入したにも拘わらず、掛け声だけで終わらせて良いのでしょうか。必要なのは、補助金に頼らず自ら責任を持って営み(=仕事)を創り出していくことでしょう。



ソフトバンクグループ(=SBG)が25億ドル(=約2800億円)を投資した米国のスタートアップ企業であるカテラが経営破綻しています。同社は旧態依然とした建設業界をIT(=情報技術)で事業再構築するというイノベーションを試みましたが、一気に事業を拡大し過ぎたために、受注した物件のコストや工期が予定を上回り事業がとん挫しています。


米シリンコンバレーの北東に位置する工業団地の一角に、カテラのトレーシー工場があります。最新鋭ロボットを備えた工場では、毎年アパート1万2500棟相当の壁や天井、床を生産できる設備が整っているそうです。一般的に建設業は、全てが人的労力に頼っているとは言いませんが自動化が遅れており、カテラはそこに目を付け合理化を進めたのでしょう。


2015年に電子機器受託製造サービス(=EMS)で最高経営責任者(=CEO)を努めたマイケル・マークス氏らがカテラを設立しています。EMSは部品の集中購買でコストを下げるのが一般的で、そのEMSで培った技術を建設業界に持ち込もうとしたのは良いのですが、建設事業の肝は工程監理と建設費積算技術にあることを知らなかったのでしょうか。


共同創業者の経歴には、建設業界に詳しい人財がいなかった様です。よくぞ未経験の事業領域であるにも拘わらず、6年もの歳月を事業を続けてこれたものと感心しますが、カテラとしては古い慣習に染まっていないからこそ業界を変革できると捉えていた様です。安易にDX(=デジタルトランスフォーメーション)を導入する難しさが浮き彫りとなっています。


マクロ的な観点から俯瞰すれば、既成の業界がITにより大きく変革して行かざるを得ないことは現実だと思います。自動車業界が脱炭素化の流れの中で、駆動力をエンジンからEV(=電気モーター車)に置き換えることにより、それまで築き上げてきた技術力や組織力を捨て去るほどの劇的な変革を迫られつつあることは、先日、お伝えさせて頂いた通りです。


それでも、その期間は10~20年を費やして為される変革だと思います。ミクロ的に見れば、その間にその事業に携わる人々がそれまで蓄積してきたエンジン車を前提とした暗黙知に、電気モーターやITの技術を持つ人々の暗黙知とを融合させ、新しいEVという製品を創発(=形式知)する、とても人間的なプロセスを時間をかけて踏む必要があるでしょう。


イノベーションというものは、今という時代でいえばITを移植したからといって直ぐに起き得るものではなく、そこに実際に事業を司る人々の暗黙知として定着するまで時間が要することを忘れてはいけません。ITは形式知ですので、それを人々が理解して暗黙知として落し込み創発した末に、改めて暗黙知から新しい形式知としてのビジネスが確立されます。


カテラの事例でいえば、折角EMSで築き上げた卓越した暗黙知(=技術力)があったにも拘わらず、それを持ち込んだ旧態依然とした建設業というビジネスモデルの要諦を理解する人がいなかった為に、それら二つの暗黙知が融合することなく変革まで至らなかったと言えます。カテラに役員まで送り込んだSBGは、何故そこに気が付かなかったのでしょうか。


今日もありがとうございます!
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