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老舗事業を活かす!

皆さん、おはようございます!
気が付けば1月も、もう終わろうとしています。束の間の正月休みが明けてからというもの、実に時間が経つのが早かったと思います。今月は、数々の新しい中小個人事業者との出会いがあり、どんどん自分がイメージする事業の方向に吸い寄せられている感じがします。



資生堂は、ヘアケアブランド「TSUBAKI」を含むヘアケア、スキンケアなど日用品事業を売却するそうです。売却先は、欧州系大手投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズで、売却額は1000億円を上回る見込みだそうです。コロナ禍で業績が悪化するなか収益力の低い事業を売却し、主力の化粧品事業に経営資源を集中させることにあります。


CVCキャピタル・パートナーズがつくる特別目的会社(=SPC)に事業譲渡を行い、資生堂が35%、CVCが65%を出資する方向で検討が進んでいます。資生堂は、同事業を運営する新会社の株主として参画し、成長と発展に協力するスタンスです。事業譲渡のタイミングは、早ければ1月中の取締役会で正式決定し、3月末にもSPCを立ち上げます。


椿ブランドといえば、多くの消費者に親しまれた老舗ブランドです。そんな事業を資生堂の経営資源の集中と選択という判断軸から売却することを残念に思います。きっと資本の論理に抗えず、苦渋の選択であったのではないかと思います。資生堂という名門企業も株式公開しているグローバル企業である以上、その市場ルールに従わざるを得なかったのでしょう。


株式を公開している企業は、株価を高め続けることを市場から要求されます。株価を高めるためには、その企業が市場から調達している資本金や借入金といった資本に係る加重平均資本コストを上回る利益(=超過利益)を企業内に蓄えて行く必要があります。仮に加重平均資本コストが6%だとしたら、その調達資本に対する利益率を6%以上にすることです。


今回の資生堂による日用品事業の売却は、それが資生堂の加重平均資本コスト(=ハードルレート)を下回っており、改善の見込みがないことから為されたものだと思います。これまで日本の企業は、欧米企業に比べてこのハードルレートに対する意識がなかった為、低い株価収益率に甘んじてきたと言えますが、昨今、政策的にも改善要求が高まってきています。


確かに資本の論理で物事を捉えれば間違った判断ではないのですが、その様な判断軸だけで生活者の精神的な豊かさまでも提供できるのかといいますと、答えはNoと言わざるを得ません。私も、2000年代前半の40才前後の時に、大手化学メーカーで同じことを行っていました。その時は、バブル経済崩壊後の傷んだ株価を浮上させる必要があったからです。


若気の至りということもありますが、ファイナンスの論理を盾に資本利益率を高めることにともなって株価が改善されていく姿が楽しくもあった訳です。それから15年余りを経て感じますことは、企業というものは資本の論理のみで評価されるものではなく、もっと文化的な観点から捉えて行く必要があるということです。老舗事業であれば尚更のことでしょう。


事業であっても、歴史とともに歩んできた文化遺産的な意味を持っていると思います。そうやって企業はブランド力を高めて行く存在でもあります。無味乾燥な資本の論理のみで、来るべき時代が築けるとも思えません。栄枯盛衰、事業にも寿命がありますが、社会にとって無意味な事業などありません。その様な老舗をどう活かし続けるか一考に値するでしょう。


今日もありがとうございます!
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