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監査報告書に損失リスク開示!

皆さん、おはようございます!
長梅雨による日照不足が嘘のように、8月に入ってからの天気は猛暑が続いています。アスファルトやコンクリートからの照り返しが厳しく、マスク越しの呼吸は外気が体温よりも高いことを実感します。そんな気候に捉われている間もなく暑い8月を過ごしています。



企業が将来の損失につながる会計情報を積極的に開示する動きが広がりつつあります。大手公開企業が開示する有価証券報告書に付される会計監査法人による監査報告書において、のれんや引当金などの経営者による将来の見積が入る資産や負債について、その判断内容の妥当性を監査法人が意見を述べることで企業の損失リスクを開示するものです。


コロナ禍の影響により各企業の業績に不透明感が出るなか、2021年3月期から全上場企業で開示が義務化されることから、約4000社ある全上場企業のうち約50社程度の大手上場企業が先取りし、2020年3月期決算から監査時に注意した重要な検討事項と対応を記載するKAM(=Key Audit Matters)を導入するものです。


具体的には、住友商事がニッケル鉱山開発を巡り企業側が約550億円の減損損失を計上することに対して会計監査法人が「経営者の仮定や判断によっており、高度な不確実性をともなう」旨を監査報告書に明記する具合です。その他にも、三菱ケミカルが過去に企業を買収した際に資産計上した買収のれんの妥当性についても同様の記載が為されてます。


KAMは外部投資家からはその過程がわからない監査の「ブラックボックス」の透明化につながるものとして、英国では2013年に、米国でも2019年より適用が始まっています。それまでの監査報告書は、監査意見として「適正」か「不適正」を短く記載するだけであり、資産の減損損失など企業の見積判断が分からないといった課題がありました。


そもそも資産の減損損失とは、固定資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、その様な減損が生じた場合に一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額した場合に生じる損失のことです。その目的は、事業用資産の過大な帳簿価額を減額することにより、将来に損失を繰延べない為に行われるものです。


企業には事業のリスクに拘束されているか否かによって事業投資と金融投資に区分されており、このうち前者の事業用資産は企業が事業の遂行を通じて成果を得ることを目的とした投資ということが出来ます。よって、その事業用資産を事業運営に用いる中で規則的な償却により売上と対応させることによりその投資回収を図っていくことが求められます。


しかし、時としてその事業用資産の取得原価(=投資額)が先行きの売上低下見通しにより全てを回収することが出来なくなった場合に、その将来回収が出来ない部分について前倒しで損失を計上することになりますが、ここに企業による「将来の回収見込み額」という見積り計算が入り込むことになります。勿論、そこに監査法人による牽制が働きます。


今までは、その見積り計算に対する企業と監査法人の遣り取りが投資家からは見えなかったものが、今般のKAM義務化により少なからずリスクの度合いが顕在化することになります。投資家は、膨大な企業情報のなかで多大な損失が計上される温床となる減損等の妥当性が明らかになることから、焦点が絞られ有効との前向きな期待が寄せられています。


今日もありがとうございます!
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