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財務の役割!

皆さん、おはようございます!
長年、財務に携わっていますが、今日の企業の活動を見ていますと、結果であるはずの財務係数が目的化している様に思えてなりません。確かに上場企業は、企業価値を高めていかなければなりませんが、それは飽くまでも参考値であることを忘れてはなりません。



株価など企業の価値を高めていく為の本質は、やはりその企業が将来に対してどの様な事業目標を描いているかだと思います。その事業が魅力的であればあるほど、将来期待される売上、利益は大きくなるものと考えられ、多くの潜在株主がその企業の株式に投資してみようというインセンティブが働きます。


例えば、以前の米アマゾンは、現状の足元の利益は赤字でしたが、将来、書籍のネット通販だけではなく、様々な商品をネットで販売するであろうという期待から、驚異的な株価を付けていました。現在で言えば、間もなく株式公開を行うライドシェアリングの米ウーバーも赤字にも拘わらず、11兆円にも上る株式時価総額が期待されています。


これら企業は、先行する研究開発費などの初期投資負担が重く、創業後しばらくの間は赤字になっていますが、何れ黒字転換することが期待されたことによるものです。もう少し、具体的に申し上げますと、企業が生み出すキャッシュフロー(=資金収支)がプラスになる(=資金収支の黒字)と見込まれた為です。


成長期待の高い企業は赤字でも株式市場で将来性を評価され、株価がプラスになる好例だと思います。もちろん、黒字企業であれば株価はプラスになりますが、例え黒字企業であっても将来性の見込めない企業は株価がジリジリと下がっていくことになります。財務理論からは、投下資本利益率が加重平均資本コスト以下になりますと株価が下がります。


投下資本利益率とは、企業が事業を行うために調達した有利子負債および資本金の総額によりどれだけの利益(=税引後営業利益)を上げることが出来たかを示す指標であり、利益を投下資本で割り込んだ数字になります。米国の企業平均は10%台、欧州企業平均で8%台、日本の企業は6%台後半という実績値があります。


これに対して、加重平均資本コストとは、その調達した有利子負債および資本金の金利や株式投資における期待利回りを加重平均したお金の調達コストを表します。日本の上場企業の加重平均資本コストは5~6%になります。すなわち、企業が調達する投下資本を媒介として、その利益率がコストを上回っていなければ損をしていることになります。


例えば、銀行から融資を受けて株式に投資することを想定します。融資に係る金利が3%だとして、これを利回り2%の株式投資をしたのでは、1%損をすることになります。
ただし、ここに思わぬ落とし穴があります。現状の株式投資利回りが2%であったとしても、もしその企業の利回りが将来的に6%を期待できるとしたらどうでしょう。


それも、将来期待される利回りが今までに世の中にない新たな事業や商品によりもたらされるとしたら、多くの投資家が注目することになるでしょう。だから、米アマゾンや米ウーバーは、現状、赤字にも関わらず高い株価を付けることが出来たのです。また、今後期待される自動運転や電気自動車を手掛ける企業の株価も同じだと思います。


このことから、企業の経済的な価値というものは、その企業の将来的な期待に起因して決定されることがご理解いただけると思います。ところが、最近の既に株式を上場している名門企業を見ていますと、将来の事業目標を描き切れない為に、短視眼的な財務テクニックにより株価を維持しようとする企業が多く見受けられます。


投下資本利益率は、資本回転率(=売上高/投下資本)と売上高営業利益率(=営業利益/売上高)に分解(=乗じる)することが出来ます。これらの財務指標を高めるためには、例えば在庫量を減らして在庫回転率を高めたり、経費を削減して利益を増やすことにより投下資本利益率を高めることが可能です。


確かに同じ投下資本利益率を高めるにしても、現状の財務効率を高めるのと、将来の成長を期待されるのでは、意味が全く異なってしまいます。いまが時代の変革期にあり、新たな事業や商品の創出を通して、今までの社会の枠組みから新たな枠組みへと変わりつつあることを考えますと、やはり企業は次なる事業目標を打ち立てて行くべきでしょう。


いまの株式市場を見ていますと、機関投資家が短視眼的な財務テクニックにより投下資本利益率を高める企業を好感する風潮があり、また企業もそれに迎合している姿に疑問が残ります。本来、財務とは事業を営むための目的ではなく、あくまでも企業の置かれた状態を俯瞰するための道具であることを忘れてはいけません。


今日もありがとうございます!
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