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のれん償却議論!

皆さん、おはようございます!
物心ついた時から、父親が地方銀行を退職して事業を営んでいたせいか、私自身も同じような道を歩んでいる感じがします。子供の頃の父親との会話といえば商売の話ばかりであり、いま振り返ってみますとサラリーマン家庭で育った子供とは一風変わっていたと思います。



国際会計基準(=IFRS)を設定する国際会計基準審議会(=IASB)は、貸借対照表に計上するのれんを定期償却しない現行のルールの維持を決め、長年の議論に一応の区切りがついています。「のれんと減損」を主題とする理事会では「コストがかかる」「耐用年数が見積もれない」など、定期償却をルール化する難しさを指摘する声が相次いだそうです。


IASBは2010年代半ばから、のれんの会計処理について改善を検討してきました。減損処理は計上が遅くなったり、小さくなったりしがちで、利益や資産の過大評価によって投資家をミスリードしかねないという指摘がなされていた為です。早めに費用化していく定期償却の再導入議論が本格しましたが、議論は難航に次ぐ難航を極めてきたと言われてます。


のれんは、現在の会計ルールで明確に認識できない様々な要素の集合体であり、機械的に費用化していいのか、何年で償却すべきかなどで意見が割れたそうです。収束の見えない議論の中で現行のルール維持に傾いたのは、上場企業にのれん償却を導入する方向であった米財務会計基準審議会(=FASB)が、今年6月に突如議論を打ち切った影響もある様です。


欧米で非償却で足並みをそろえる形となった今回の決定は、償却を続ける日本にも影響を及ぼす可能性が大きいと見られています。平時の利益を押し下げる償却ルールのせいで、海外企業と同条件で競争できないという不満が企業の間でくすぶっています。定期償却導入議論の契機は、のれん巨額減損の連鎖が資本市場に混乱をもたらす課題が温存されたままです。


日米欧の主要企業ののれんは2021年度末で合計約6.5兆円に達しており、純資産対比では3割を占めるまでになっています。日本がのれん非償却に動けばリスクも一段と膨らむという見方もあります。会計処理の議論に区切りを付けたIASBは、情報開示の充実という別の道を探っているそうです。9月にM&Aに関する開示の充実を暫定決定しています。


M&A実施がどんな戦略的根拠に基づいているか、目的がどれ位達成されているか、目的達成度を測るための指標、期待されるシナジー(=相乗効果)の定量的開示といった項目が対象になる見通しです。開示を通じM&Aの成否を浮き彫りにすることで、のれん償却議論の新たな手掛かりができるとの期待もありますが、開示の基準化までに時間を要すでしょう。


そもそも、今般のれん償却議論は、日本と欧米で財務諸表を捉える本質が異なることから始まっています。一昔前なら、財務諸表は適正な期間損益計算を行うことを目的としていましたが、それでは貸借対象表の実態を歪め果たして企業の公正価値(≒時価)を評価しずらいという本質的議論がなされ、損益計算書よりも貸借対照表の方を注視する着地を見てます。


それでも日本は、貸借対照表と損益計算書の両方を重視する考えを採ることで、のれん減損の必要性判定した上で、必要あれば一時的減損として処理して定期償却は継続することとしています。ただし、のれんを構成するノウハウなどの無形資産を機械的に償却すべきか議論の余地が残ります。利用者は財務情報を過信することなく目利き力をも効かせるべきです。


今日もありがとうございます!
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