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銀行によるスタートアップ融資!

皆さん、おはようございます!
スタートアップ企業の資金調達といえばベンチャー企業を専門とする機関投資家(=ベンチャーキャピタル。VC。)か事業会社によるベンチャー投資に相場が決まっていたのですが、ここに来て銀行が融資をする動きが出て来ているようです。



設立から間もないスタートアップ企業が成長資金を調達する場合、新株発行を伴うエクイティファイナンスを活用するしか方法がありませんでした。VCや取引関係のある事業会社などが引き受ける返済義務のない資金ですが、創業者や経営陣の持ち株比率が下がる他、株式公開を前提とするため費用的、時間的なコストが負担となっています。


一方、銀行からの融資は、設立から間もないスタートアップ企業にとっては、信用力も担保や保証も不足しており、これまで銀行も取り合ってこなかったのが現実だと思います。
経営陣などの出資比率を下げずに機動的に資金調達できる利点はありますが、負債が膨らみすぎると企業の信用力が低下してしまう難点があります。


スタートアップ企業の株式の調達コスト(=投資家の期待リターン)が年20~50%と言われています。低金利が続く市場環境の中で融資は数%で済むことから、長期的に成長性が高いスタートアップ企業で、上場を急がずにじっくりと事業拡大をしたい企業は、融資による調達を行いたいところでしょう。


新素材やロボット関連のスタートアップ企業が相次ぎメガバンクなどから50億円以上の融資を行う契約を結んでいます。上場を急がず事業拡大を図る企業側と、マイナス金利で運用難に悩むなか成長企業を取り込みたい銀行側の双方の思惑が一致していることが背景にあります。資金調達手段が広がり、新たな事業創出に向けて弾みがつきそうです。


三菱UFJ銀行は、クモの糸を模した人口の新素材を手掛けるスパイヤー(=山形県)に50億円の協調融資(=シンジケートローン)を組成し、山形銀行、荘内銀行、鶴岡信用金庫が参加します。スパイやは製品開発に10年を費やし、その資金はVCから調達しましたが、タイで量産プラント建設する為の事業化資金に充てる計画です。


三井住友銀行は、ロボット制御システムのMUJIN(=東京都)に75億円の融資枠を設けています。MUJINはこの資金を活用して中国広州に子会社を設立して海外市場の開拓に乗り出すとともに、技術者の採用を増やす計画です。みずほ銀行も、人工知能(=AI)を活用した営業支援のストックマーク(=東京)に3億円の融資を行っています。


三菱UFJ銀行は、こうした融資に舵を切るため5月には行内の複数部署から数十人を集めて事業助言など企業を一体で支援できる専門部署を設けるそうです。三井住友銀行やみずほ銀行も既にスタートアップ企業への融資を行う専門部署を設けています。専門部署を設けても、銀行としてどこまで実効性をもって対応できるかが鍵だと思います。


通常、技術系のスタートアップ企業は、創業当初から研究開発による先行投資が嵩み、数十億円の営業赤字を出すことも珍しくありません。一般的に銀行は債務超過(=過去の累積損失が資本金額を上回っている状態)や営業赤字企業については、余程それらが解消される見込みがなければ、融資の対象として相手にもしないものです。


今回のスパイヤーに対する三菱UFJ銀行の対応は、経営者との面談や工場視察を重ね、競争力を判断したとしています。それでも将来のことは予測がつかず不透明であることから、融資には至らないのが今までの銀行です。スパイヤーの件は、製品の余程の競争力とそれに裏付けられた販売可能性がある程度の確証を持って読めたものと思います。


基本的に銀行はリスクが顕在化している融資は行いません。当然といえば、当然かもしれませんが、ただ単に融資審査を行うだけではなく、その顕在化しているリスクや潜在的なリスクを含めて、スタートアップ企業が抱えるリスクを回避するアドバイスをも行いながら、融資に繋げて行く事業努力が必要だと思います。


その様なことを通して、銀行としての事業を見る目利き力も養われて行くことになりますし、新たな収益機会に結びつけることも可能でしょう。今回ご紹介したメガバンクによるスタートアップ企業に対する融資は、株式公開も視野に入れることのできる比較的優良な企業でしょう。系列証券会社を通じて上場時の主幹事証券獲得の思惑もあると思います。


これから、様々なスタートアップ企業への融資が行われていくと思いますが、銀行がどこまでリスクを取りに行けるのか真価が問われると思います。金融工学的にリスク回避する手段を駆使しながら、銀行本来の利益の源泉である事業の目利き力を是非とも高めて行って頂きたいと思います。それが中小企業への事業性評価にも繋がって来るからです。


今日もありがとうございます!
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