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西武使用金庫!

皆さん、おはようございます!
企業組織というものは、自らのビジネスモデルが的を得て勢いに乗っている時こそ、その集団心理に流されることなく、社員一人ひとりが自律的に行動しなければならないものかもしれません。人間は理知的に行動しているようで、意外に曖昧なものかもしれません。



全国の地方銀行の業績が悪化の一途を辿っている中で、信用金庫は比較的堅調に業績を伸ばしています。地方銀行が、地元中堅企業を顧客基盤として融資量が伸び悩んでいるのに対して、信用金庫は地域の中小企業を顧客に毎年平均約10%程度の融資量を増やしています。同じ地域金融機関なのに、どうしてこの様な違いが出て来るのでしょうか。


その理由は、地方銀行は、取り引きの長い老舗中堅企業を中心顧客と据えており、新たな顧客開拓に積極的ではないことが挙げられます。融資に際してのスタンスが、物的担保や個人保証などの担保主義に捉われていることもありますが、比較的金額の嵩む融資を行うために融資対象である事業に対するリスクが取り難い体質が染みついているからです。


これに対して信用金庫は、地方銀行に比べて規模の小さい中小企業を顧客基盤として持つため、1件あたりの融資金額も少額となり、融資リスクが分散されることが挙げられます。また、最近の信用金庫は、より顧客とのリレーション(=密着度)を高めており、担保偏重に捉われない事業性評価により融資を行っていると言えます。


最近の信用金庫は、比較的安定的に預金量や融資量を伸ばしていることから、地方銀行の預金量や融資量と比較してもひけを取らないほどの事業規模となっていることは意外に知られていません。その中でも、東京を地盤とする西武信用金庫は、この10年足らずの間に融資量を90%増やし、中堅の地方銀行に匹敵するまでに成長しています。


西武信用金庫では、お客様支援センターを設けて徹底的に顧客の課題を解決することにこだわっています。顧客の抱える課題に対して、事業支援、街づくり支援、資産形成・管理支援にセグメントして、非金融事業であるコンサルティングサービスに力を入れることにより、金融庁や同業他社からも地域金融ビジネスの旗手と目されてきました。


例えば、地域の新たな事業の育成に関しては、独自に大手企業の研究開発部門や地域の大学と連携し、企業が持つ知的財産権を活用した事業インキュベーションコンテストを毎年開催したり、独自に西武信金キャピタルというベンチャーキャピタルを設立してスタートアップ企業の多様な資金ニーズに応えたりしています。


また、老朽化した建物が増える都内の不動産向け資金需要に対しては、通常ですと税務上の法定耐用年数を超えて融資が出来ないのですが、リノベーションにより実際の経済的耐用年数が伸びますので、不動産鑑定評価により査定した耐用年数に基づき融資を行うことにより、街づくりに寄与しています。


矢継ぎ早に、地域の活力を高めることにつながる施策を打ち出し、それを自らの融資量増加に繋げてきた点において、非常に先進的で見習うべきことが多い金融機関であると思います。ところが、出る杭は打たれるではありませんが、反社会的勢力と疑われる相手への融資を契機として行われた金融庁による検査で不祥事が露見してしまい残念に思います。


先の老朽化建物への融資について、経済的耐用年数を不動産鑑定士に査定してもらうに際して、職員や支店が融資を行い易くなるように、期待する耐用年数を不動産鑑定士に示唆するようになり、実際には経済的耐用年数を超える不動産物件にも融資してしまう不正行為に繋がってしまい、金融庁から業務改善命令を受けるに至ってしまっています。


金融庁や業界からも注目されていた折に残念な話しですが、組織風土として融資量を伸ばすことに傾注し過ぎてしまい、集団心理として踏み越えてはいけない一線を越えてしまったと言えるでしょう。組織とは調子のよい時には遠心力が働くものです。しかし、理事長以下役職員がもう少し自律的に物事を判断していれば避けられたことだと思います。


その背景には、成果主義を徹底させ過ぎてしまい、成果を上げた支店長や職員には報酬により報いたことが企業組織に必要以上の遠心力を働かせる一因になり、企業統治に綻びをもたらせてしまったのでしょう。強い発言力を持つ理事長に対して、充分な牽制機能が発揮されてこなかったことにも問題があるでしょう。


西武信用金庫では、2011年には定年制度を廃止し、60歳を過ぎても役職定年を迎えることなく、能力の限界を感じるまで働けるようにしたそうです。また、中途採用も年齢の制限をなくしており、少子高齢化の時代に個人の働く力を尊重した働き方改革は、業界を越えたこれからの日本の雇用のあり方を示す一つの解になると思います。


不祥事は不祥事として、襟元を正して行かなければなりませんが、西武信用金庫が取り組んできた貸し手の自助努力としての創意工夫に、これからの地域金融機関のあるべき姿として一定の評価に値すると思います。全ては、自らが持つ事業資源と経営環境を見つめ直し、独創的なアイディアと知恵で解決していけるものだと思います。


今日もありがとうございます!
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