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規模から範囲の経済へ!

皆さん、おはようございます!
私たちの社会は、既にいままでの規模を追いかける経済の枠組みから抜け出し、次なる新たな価値観へと歩み出しているように思えます。ただ人間の寄り合い所帯である組織集団を見ていますと、未だ目線を足下に向けていることが気掛かりです。



ルノーと日産自動車の関係を見ていますと、混迷を極め、どんどん深みに嵌まって行く様に見受けます。カルロス・ゴーン元会長なき後の日産自動車ガバナンス体制確立に向けた同社の指名委員会設置や役員体制の見直しなどについては、確かに必要なことではありますが、ルノー排除の姿勢をあからさまにしていますので感情論になってしまうでしょう。


いま自動車業界に必要なことは、スケールメリットを追い求めるのも良いですが、それ以前に来るべき時代に業界がどの様に変わって行かなければならないかを充分に論議すべきであり、それを実現するために当面どの様な経営の舵を切って行くべきかを明らかにすべきだと思います。それなしに、ガバナンスを語っても絵に描いた餅でしょう。


確かに今までの自動車産業は、グローバル市場で安定的に新車販売台数が伸びて来ましたが、それも飽和しつつあり規模の経済を追求しても利益は伸びず、むしろ規模の不経済に陥りはじめていると言えます。FCAとルノーの経営統合白紙化やルノーと日産自動車の間で燻っている経営統合問題もそれだけ市場が混迷を極めているからだと思います。


経営統合を一度も行わずに独走態勢で事業を営んできたトヨタ自動車の豊田章男社長は、資本の論理より仲間づくりであると、業界再編のあり方が一変することを示唆しています。確かに、いままで自動車産業は経営統合による垂直統合および水平統合により、生産効率の改善と新車販売台数拡大を目指してきたと言えます。


ところが、その様な経営統合を果たしてきた巨大自動車メーカーの売上や利益の規模は確かに増加していますが、新車一台当たりの営業利益で見ますと、必ずしも利益率が改善したとは言えないようです。むしろ、悪化している企業グループすらあるのが現実です。
経営統合により事業が飛躍的に改善するのは、ある一定の市場規模迄と言えるでしょう。


その意味では、規模の経済という概念も、ある一定の与件や条件の下で成立する机上の概念であり、全ての状況下において適応できるビジネス上の通念でないことに留意が必要だと思います。私たちは、様々な理論や概念を身に付けて来ましたが、それは必ずしも自らの経験を通して得た知識ではありません。


自動車業界に似た産業として住宅産業を上げることが出来ます。10年位前まで新築着工軒数が年間100万軒位あったものが、現在では80軒件を割り込み、2030年には60万軒を割り込むと言われています。少子高齢化、国内における需要が激減しているからですが、自動車産業も何れは同じ道を辿ることになると思います。


その様な経営環境下において、トヨタホームとパナホームが経営統合を行い、IoT(=あらゆるモノがインターネットにつながる)を駆使したスマートホームに留まらず、これからの時代に相応しい住環境を整えた街づくりに参入することを発表したことは、まだ記憶に新しいと思います。


単に工場生産した戸建住宅を販売するだけではなく、家をプラットフォームと見立て、家をオートメーション化することにより、様々な新しいサービスを提供することができ、新たな収益源となります。この家というプラットフォームを基軸にサービスの幅を広げていく経済行為を「範囲の経済」といいます。


これからのクルマも生産販売することだけではなく、IoTにより集積するデータを駆使すれば、様々な新しいサービスを展開することが可能となります。いまはクルマがコモディティ化して家庭によっては一人一台クルマを所有する時代かもしれません。しかし、これからは、所有よりもいかに効率良く利用して素早く移動するかが大切な時代です。


MaaS(=あらゆる乗り物を効率的に連携させた移動サービス)の実証実験も至る所で始まっています。自動車産業も規模の経済の追求から、範囲の経済を追求することにより、新たな事業の可能性がこれから遣って来るでしょう。その時の自動車産業は、モノを作る会社から、サービスを創る会社へと変容するものと思われます。


その様に考えますと、いまの自動車産業に必要なのは経営統合によりスケールメリットを追求することではなく、クルマをプラットフォームと捉えた様々な新しいサービスを創出する異業種企業と連携していくことが不可欠だと思えます。クルマを作る技術を深めながら、一方でクルマという事業の範囲を広げていく視点が必要でしょう。


今日もありがとうございます!
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