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会計思考のM&A!

皆さん、おはようございます!
三連休はいかがお過ごしでしたでしょうか。
今週は4日行けば、また次の三連休が遣って来ますので、気分的に楽でしょう。
私は、仕事漬けの三日間となりましたが、今週末はオフにしたいと思います。



国際会計基準(=IFRS)を策定する国際会計基準審議会(=IASB)が、企業買収に関わる会計処理の見直しに着手しているようです。買収代金のうち相手企業の純資産を超えて支払った差額(=のれん)について、費用計上を義務付ける議論を始め、2021年にも結論を出すとのことです。


のれんとは、M&Aにおいて買収企業が買収先企業の純資産額よりも高い価額で取得した際に発生する差額のことであり、買収企業は資産として計上することになっています。
最近、巨額のM&Aが増えており、買収先企業本来の価値である株価よりも高い価額で取得することから、こののれんが増大する傾向にあります。


いままでIFRSでは、のれんの費用計上(=償却)は不要で、買収先企業の財務内容が悪化した際に、資産計上しているのれんの価値を一度に引き下げる減損損失の計上を求めていました。これに対して、日本では最長20年間に渡る償却を求め、その償却後ののれんよりも買収先企業の財務内容が悪化した場合に減損する併用方式を採用しています。


IFRSの減損損失を計上する方法ですと、買収企業が減損損失を突如として公表するケースが多く、投資家から分かり難さを指摘されていたところです。
例えば、東芝の米原子力発電子会社に関わる巨額の損失計上は記憶に新しいと思います。これは東芝が会計処理に際して日本基準ではなくIFRS基準を採用していたからです。


最近、日本では海外企業の買収に力を入れておりグローバル企業化していることもあり会計基準を日本基準からIFRS基準へ変更する企業が増えています。
その背景には、のれんを計上した企業買収を行っても、日本基準の様に償却をする必要がないことから、損益計算書上、利益が嵩上げできるという事情も見え隠れします。


ところが最近の企業買収では買収価額を釣り上げてでも取り引きを成功に導こうとする思惑が働いている為、必要以上にこののれんの金額が膨らんでいると言えます。
のれん金額が膨らむということは、少しでも買収先企業の業績が悪化しますと、IFRS基準によってもそれだけ減損損失計上の対象になりやすいと言うことが出来ます。


先日、ファイナンス思考と会計思考について記しましたが、各々に照らし合わせてみますと以下の様に考えることが出来ると思います。
ファイナンス思考による企業買収では、理論上、株価は買収先企業が営む事業から期待される将来の利益としてのキャッシュインフローの現在価値と等価となります。


よって、最近増えている買収先企業を株価以上の価額で買収するためには、その超過価額に見合う増分キャッシュフロー(=増分利益)が期待できなければなりません。
これを買収企業と買収先企業が事業統合することにより生じる相互補完効果(=シナジー効果)により、増分利益としてのキャッシュフローとして説明することが出来ます。


ところが、最近の企業買収を見ていますと、買収企業を手中に納めることばかりが先行してしまい、期待できるシナジー効果を考慮した買収価額を遥かに上回る金額で買収を行い、あたかも買収に成功したという企業が実に多く見受けられます。これではファイナンス思考では、買収企業の株価を毀損することになってしまいます。


このことに関する買収企業の理解は、IFRSに基づくと財務諸表上、特に損益計算書上、償却を行う必要がなく、利益に影響を及ぼさないことから、必要以上に高い価格で企業買収を行っても問題はないという考え方の温床になっています。
本来、シナジー効果を超過するのれんは、買収時に一括費用計上しても良いくらいです。


買収企業側も、こののれん会計におけるIFRSと日本基準の違いを認識したうえで、敢えてIFRSに変更する企業が多いのも事実です。ある意味、財務諸表を利用する企業の利害関係者を欺くことになりかねない企業としての行動は慎むべきだと思います。
企業の論理からすれば、ルールに則っているという声が聞こえて来そうです。


企業を司るのは、そこに所属する人です。日本国内の市場が縮小するなかで、大企業といえども存続をかけた企業努力をしていることは理解できます。ただし、いま日本の企業に必要なのは、海外市場での覇権争いではなく、来るべき情報化時代における新たな事業の創出であることを忘れてはならないと思います。


今日もありがとうございます!
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