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ダウ・デュポン、メガ再編の意味!

皆さん、おはようございます!
9月になってはじめての週末ですが、
気候が急に秋めいてきましたね。
クルマを運転しながら、思わず紅葉でも見に行きたくなってしまいました。


今日のブログはいつもの未来予測とは趣を変えて、
私の本来の専門領域である業界再編について触れてみたくなりました。
キーワードは、海外の化学メーカー2社の経営統合により売上高8兆円の超メガ級の巨大企業が誕生したこと。


それと対比する様に、セコムがベネッセからコールセンター事業を買収すること。
以上について、私が推奨する財務指標であるROA(=総資産利益率)を織り交ぜながら、本来事業のあるべき姿をコメントしてみたいと思います。先日記したトヨタによるiotベンチャーとの連携という今後の形に関わってくる事例だと思います。


総合化学メーカーであるダウ・デュポン社は9月1日付で米総合化学のダウ・ケミカル社と米総合化学のデュポン社が合併により誕生した会社です。
これにより合併後の売上額が実に8兆円を超えるようになり、名実ともに世界No.1の総合化学メーカーが誕生したことになります。


国内で最大の総合化学メーカーが三菱化学HDで売上高が3兆円強ですから、その規模の大きさが群を抜いていることが分かると思います。
この経営統合後、樹脂や接着剤等の産業用素材を取り扱う事業、農業材料や農薬、種子を取り扱う事業、電子材料、医療材料を取り扱う特殊製品事業に分社化するそうです。


こうやって見ますと次世代を担う先端技術に基づく新たな製品群は見当たらず、
どちらかと言いますと自動車産業をはじめとする最終製品を作るメーカー向けの素材が中心であることが見てとれます。本来、化学技術の領域も計り知れない先端性を持つ事業領域であると思うのですが、世界的に見て新たな製品が生まれてきていません。


こういった成長性が鈍化してきた企業にとって、継続的な企業成長を遂げて行く(=例えばROAを毎年上げて行く等)為には、売上成長が鈍化していることから、生産設備の統廃合等によるコスト削減により毎年の利益を拡大して行くことになります。もちろん、経営手法として取り得る常套手段ではありますが、少しばかり将来への夢が欠けています。


今回の経営統合に対する日本の化学メーカーのトップの反応は、リチウムイオン電池、有機ELパネル、IoT関連機器に必要な部材等の高付加価値な技術力でダウ・デュポンとは異なる路線を歩むとしています。私もこれからの時代、AIを活用したIoTが大きく生活の中に取り込まれるので、これら機器に必要な部材に傾注すべきだと思います。


ただし、日本の総合化学メーカーにも従来からの汎用的な産業用素材事業、農業事業はあります。これらの事業は、汎用技術で効率よく大量に製品を製造する成熟事業と言われる領域になりますので、これらの既存事業の中から新たな技術に基づく新製品が生まれて来ることはありません。寧ろ人口減少により売上が頭打ちになる可能性が高いです。


ダウ・デュポン社の様に資本の論理を追求するのは、如何にもアメリカ的な大胆さをも感じますが、そこにAI技術を活用して生産効率を飛躍的に高める等の施策も併せて売って行くことが必要なのではないでしょうか。例えば、新たな工場のあるべき姿を目指していくとか。究極はアマゾンの様にどこまでオンデマンド生産に近付けるかだと思います。


一方、セコムのコールセンター事業をベネッセより159億円で買収する件ですが、米投資ファンド出身の社長の下で会社再建を急ぎたいベネッセとグループ内の各事業部ごとに設けていたコールセンター業務を集約し収益事業化したいセコムの思惑が合致した良いM&Aだと思います。


コールセンター事業は元祖BPO事業(=ビジネス・プロセス・アウトソーシング=事業支援事業の外部委託)であり、今ではEC業務の代行まで様々な事務業務の受託を顧客企業の海外展開に合わせてグローバルに展開しています。ベネッセは、本業である教育事業に原点回帰する必要からコールセンター事業を売却することに決めたのでしょう。


一方のセコムは、グループ内業務の集約効率化という意味がありますが、
それ以上に事業会社向け機械警備自体をBPO事業と捉える事も出来ますので、
BPO事業領域の裾野が広がると私は見ています。特にこのBPO業務は、今後、AI技術を活用することにより、巨大インフラ産業として変容することが予想できるからです。


こうやって考えてみますと、確かに株式を公開している企業は株価を高め続けなければいけない宿命を負っていますが、それを財務テクニックのみに負うのではなく、新たな技術をも取り入れながら新たな事業を創出していくか、既存の事業を変革し続けなければいけません。


トヨタ自動車は、あれだけのエクセレントカンパニーでありながら、自前主義を止めて国内外のベンチャー企業との連携に方針を転換しています。自動車のIoT化への布石と、プラットフォームとして情報武装化した自動車を活用した、ライドシェア等の新たなサービス提供への布石です。


公正取引委員会による独占禁止法の規制があるため、止めどなく企業が資本の論理により機微を拡大して行くには制約があります。そのせいもあり自動車産業等は資本業務提携に留めているのと、最終消費財を販売する産業である為、確立しているブランドを経営同号により融合できないという業界特性もあるものと思います。


ここに面白い統計があります。
日本はROE(=株主資本利益率=利益÷株主資本)が欧米から比べると低いと言われていますが、ROA(=総資産利益率=利益÷総資産)は日本が米国を逆転したそうです。
2016年度で日本2.90%、米国2.89%、ドイツ1.35%。


ROEとROAの関係を見て行きますと、ROE=ROA×財務レバレッジ(=総資産が自己資本の何倍か)で表されます。総資産を持つためには、借入金等の他人資本と株主資本等の自己資本が必要となりますが、総資産に占める他人資本の割合を高めるとROAに比べてROEを高める事が出来るという財務的な技法をとることができます。


ROEは株価と直接的に連動しますので
財務テクニックとして否定されるものではありません。
ですが、ROAにしろ、ROEにしろ、大切なのは分子にある「利益」を如何に高めるかという事と、分母にある「総資産」を如何に効率良く使用するかという点に尽きます。


その為には人間の叡智により新たな技術、商品、サービスを創出し続けることが大切であることを忘れてはいけません。
今後、ますます人間の能力や創造力に焦点があたる時代になっていきます。暮らしを楽しみながら、リラックスしたマインドを如何に保つかが創造力の源泉ではないでしょうか。


ここまでお読み頂きましてありがとうございます!
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