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規模の不経済!

皆さん、おはようございます!
いまの企業は、資本力を背景として規模の経済を追求することにより収益を得るビジネスモデルだということができます。しかし、そのビジネスモデルも市場が右肩上がりに成長することを前提としたモデルであり、その前提が崩れた時には規模の不経済となります。



アパレル業界では、2018年に市場に投入された衣料品のうち、実際に売れた商品は46.9%に留まり、この平成の約30年間に半減しているそうです。業界として収益性よりも売上高を重視する慣行から抜け出せず、売れ残った商品を値引きする悪循環に陥っているといえます。


2018年に国内で出回った衣料品は29億点と1990年と比べて約2.5倍に膨らんでおり、これに対して購入されたのは約13億点に留まり、市場に投入された衣料品のうち半数以上が売れ残っています。大量に生産しても売れ残り、結果的に値引きに走って売上高も減少する構図となっています。


過剰生産が始まったのは1990年代にH&Mやユニクロなど大量生産で低価格が主体のカジュアル衣料が台頭したことにあります。アパレル各社は、生産コストを抑えるために中国や東南アジアに進出し、日本市場で流通する衣料品総量に占める輸入の割合が1990年当時の51%から2017年には97%に達しています。


中国や東南アジアの工場に生産を委託しますと、MOQと言われる一定数量を発注しなければ現地の工場が生産を引き受けてくれないという問題が、アパレル各社が生産量を増やさざるを得ないことに拍車をかけているとも言えます。そのことが、需要よりも生産量を基準に計画を立てる慣行に向かわせているのでしょう。


このアパレル業界のビジネスモデルを俯瞰しますと、生産コストを下げるために中国や東南アジアの工場へ生産を委託した筈だったにも関わらず、この過剰生産による過剰在庫の値下げロスや在庫廃棄ロスが、結局は原価コストを押し上げる悪循環に陥らせているということが出来ます。


確かにファッションは、商品の流行に左右されるという意味では他の業界に比べて水もの商売と言われる所以ですが、それにしても生産量の半数が不良在庫となってしまう事業構造は見逃すことができず、なぜ30年化にもわたり放置され続けて来たのか不思議でなりません。ビジネスモデルに問題があるとしか言いようがないでしょう。


商品のライフサイクルが非常に短いこともアパレル業界の特徴ということが出来るでしょう。販売機会ロスを減らす為に過剰に見込み生産を掛けてしまう点も否めないと思います。それは、アパレル各社が商品企画販売に専念し、生糸生産、染色、仕立てといった生産プロセスが各々の企業に委ねられている業界構造にも問題があると思います。


トヨタ自動車のジャストインタイムの生産方式ではありませんが、アパレル業界の場合、シーズン制の高い商品を生産するために、各々の機能を担当する生産者に対して生産キャパシティを事前に見込みで確保してしまうので、木目の細かい生産調整ができないことにも問題がありそうです。


その様な業界構造に対して、短時間に新商品のデザインを企画し、必要最小限の販売量を提携関係にある生糸、染色、仕立て各生産業者と密に連携して、販売動向を見極めてこま目に追加生産を掛けていくアパレル会社も海外では出はじめています。それを実現するためにはIT(=情報技術)を多用することは無論です。


現在の日本の多くのアパレル各社がその様な努力を行ってこなかったことが、現在の様な悪しきビジネスモデルに至った経緯だと思います。このことは、アパレル業界に限らず、食品業界にも大なり小なり似たところがあると思います。ちょうど、コンビニエンスストアにおける廃棄ロス問題が顕在化しているのと同じ様な課題だと思います。


企業が規模の経済を追求し、市場が右肩上がりに成長している時なら、これらの問題は顕在化せずに吸収で来ていたかもしれません。しかし、消費者のニーズが多様化して参りますと、一気に規模の経済が規模の不経済になってしまいうことを私たちは思い知ることになるでしょう。


いまの企業は合理性に磨きをかけて来たように見えて、意外に経済の前提が変わると、それが非合理となってしまうものです。情報化社会は、その様な変革を私たちに投げかけて来るものであり、それを解決して行くのも情報技術によるということが出来ます。これからの時代は、規模の経済から限りなくパーソナル経済へと変化させていくでしょう。


今日もありがとうございます!
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