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真の資本コスト経営のあり方!

皆さん、おはようございます!
ようやく日本の企業にも資本コストという概念が知れ渡ってきたようです。
企業の宿命として、単に利益を増やすだけではなく経済的な価値を高め続けていく必要がありますが、それは同時に企業の社会的な価値を高めることも意味しています。



いままで企業は、自らの事業の業績の良し悪しを最終利益が出ているか、その最終利益が昨年度と比べて増えているかどうかという観点から判断してきたと思います。それ自体は間違っていないのですが、総量としての利益額だけでなく、その利益がどの程度効率良く生み出されているのかも見ていく必要があります。


その効率の良さの視点として、売上に対する利益の大きさを見る売上高営業利益率(=営業利益÷売上高)、また事業に活用している総資産に対する利益の大きさを見る総資産営業利益率(=営業利益÷総資産)などがあります。前者は如何に無駄な経費を使わずに、後者は必要最小限の資産で効率良く利益を上げたかを見ることが出来ます。


例えば、同じ事業を営む二つの会社があったとして、両社がともに同額の利益を出している場合に、一方はもう一方の2倍の売上高を計上し、使用する総資産も2倍であったとすると、確かに会社としての規模は大きくは見えますが、利益を生み出す効率性という観点からしますと、少ない売上と総資産から利益を生み出した方がエコだと言えます。


無駄な経費や少ない資産で利益を出した方が、社会環境にも優しくすぐれているということが出来ます。このことは、工業化社会の下で企業の業績を測る見方ということだけではなく、これからの情報化社会においても適用される普遍的なものの見方だと言えるでしょう。社会に付加価値を提供する企業としては、エコシステムである必要があります。


最近、売上や総資産に対する利益だけではなく、企業が使用するキャッシュとしての資本に対する利益の効率性に目が向けられ始めています。企業が事業を運営して行くにあたり、銀行から融資を受けたり、株主から資本金を調達したりします。資本コストとは、その投資家が期待する金利、配当、株価といった収益(=リターン)を意味します。


企業が利益を出しても、資本を無駄に使用してしまいますと、利益<資本コストということも起こり得ます。企業が資本コストを上回る利益を生み出してはじめて企業の経済価値(=株価)を高めることが可能となります。この資本コストという概念がなかなか日本の企業に浸透せず、欧米企業に比べて周回遅れであることが否めません。


ただし、このファイナンスのセオリーに従いますと、資本コストに見合う利益を上げられない事業や資産を手放せば良いという安直な考えに結び付く懸念があります。行き過ぎた資本の論理による要請で、短期的な視点で株価を高めることが可能ですが、それでは長期的な視点で企業価値を継続的に高めることを疎外する可能性をはらんでいます。


一世を風靡した米GEは、1990年代よりこの資本コスト経営を採り入れていますが、現在は業績の悪化と株価の低迷に喘いでいることに留意する必要があります。M&Aにより機動的に事業の組み換えを行って来ましたが、その様な短期的な視点による経営では新たな事業が育ってこないことを如実に語っていると思います。


いまという時代は、工業化社会から情報化社会へ移行していく端境期にあり、新たな社会の枠組みを創り上げていく過程にあるといえます。その様な中で必要なことは、資本コストに満たないオールドビジネスを売ることではなく、新たなビジネスモデルに転換すべく情報技術と融合したり、新たな事業を創出して行くことです。


これからの事業は、規模の経済を追求することではなく、いかに一人ひとりの個客に近寄り、自らの事業哲学や事業理念といったものに共感を得ていくことが大切な時代になります。また、一企業市民として、社会の課題に対して事業を通して解決することにより、企業の社会的な価値を高めて行く必要もあるでしょう。


その意味では、この社会的な価値の向上に、その結果としての経済的な価値の向上がともなってはじめて企業価値を最大限高めることが可能になると言えるでしょう。資本の出し手である投資家も、単に資本コストを上回る見せかけの数値だけではなく、生み出されるその利益の質を注視する時代になりつつある様に思えます。


資本コスト概念と企業の経済価値(=株価)のメカニズムが社会に浸透することは良いことですが、企業が事業を営む上で本質を見間違えないようにする必要があるでしょう。
真の資本コスト経営とは、企業が社会的に意義のある事業に資本を投下した時に、あとから資本コストに余りある利益が付いてくるものだと言えるでしょう。


今日もありがとうございます!
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