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武田薬品の7兆円買収!

皆さん、おはようございます!
情報技術革新により様々な産業で今までの事業の枠組みを超えるイノベーションが求められるようになっています。今まで活用してきた事業資源の古き部分を捨て去り、新たな要素を付け加えることにより付加価値を高める視点が企業買収においても必要な時代です。



先日の武田薬品工業の臨時株主総会において、アイルランド製薬会社シャイアーへの約7兆円による買収が可決された様ですね。創業家やOB株主からは買収への反対意見が出ており、一時買収の行方が危ぶまれましたが、最終的には機関投資家株主より賛同を得て、株主の2/3以上が賛成し可決した様です。


これで売上規模で世界第8位の巨大製薬会社が日本に誕生することになる訳ですが、私もこの武田薬品工業の規模を追求するM&Aについては、時代の流れに逆行していると思います。いま世界の製薬会社に求められているのは、企業としての規模ではなく、いかに情報技術を活用して新薬(=遺伝子治療薬など)を開発して行くかということです。


特に武田薬品工業は、いままでに開発してきた新薬の特許期限が到来しており、当面の経営の安定性が危ぶまれている中で、本来は研究開発型の中堅企業やベンチャー企業の買収を行うべきところ、スケールメリットの追求を優先させています。これにより財務基盤の拡大は図れますが、7兆円という取得価額のツケを背負い込むことにもなります。


確かに買収後の売上規模は1兆7700億円から3兆4700億円に増加し、それに伴なって利益の規模も増大しますが、買収のれんが4兆2000億円にも上り、経営を揺るがしかねません。一番問題視したいのは、現状3200億円の研究開発費が4000億円にしか増加しないことです。


その意味では、今回の武田薬品工業の買収戦略は短視眼的ではないかと思えます。
いま必要なのは、いかに研究開発を通して新薬を生み出せるイノベーション体制を構築して行くことではないでしょうか。これからの時代は、右肩上がりの量を追い求めるのではなく、質を追求して付加価値を高めていくことが大切です。


そんな経済環境の中で、トヨタ自動車とパナソニックは時代を見据えて、着実に前向きな布石を打ち始めているように見受けます。グループ売上高28兆円のトヨタ自動車と8兆円のパナソニックという巨艦を大きく変革させようとしています。武田薬品工業も規模に甘んじていないで、これ位の対応を図っていく必要があると思います。


自動車産業においては、今までのエンジンの付いたクルマを販売する時代からCASE(=つながるクルマ、自動運転車、カーシェアリング、電気自動車)という全く新しい事業領域へシフトすることが急務となっています。その様な中でトヨタ自動車は、常務執行役員以下の幹部社員の役職を廃止し、新たな事業へ適材適所の配置転換を断行します。


今まででしたら組織部門の責任者として、常務、部長、室長、理事といった約2300名の役職者が年功序列により配置されていましたが、それを取り止め新たな概念のクルマビジネスを立ち上げるのに相応しい人財を年齢に関係なく登用していこうというものです。
新たな事業を開発して行く為には、組織体制をフラットにすべきだと考えたのでしょう。


パナソニックも将来に繋がる新たな事業の芽が出てこないことに焦りを感じています。
そこで考えたのがアジャイル開発(=開発過程から顧客の要求を取り入れながら俊敏かつ柔軟に対応することに主眼を置く開発手法)を採り入れ、今までの縦割りとなった開発手法を見直し、プロジェクト単位でスピーディーに製品を上市する方法を模索しています。


それと同時に、一度パナソニックを中途退職したOBを新規事業部門、デザイン部門、商品開発部門に呼び戻し、要職に就けています。長年パナソニックに勤務する生え抜き社員だけでは組織が硬直化してしまい、新商品開発などに弊害がもたらされると考えからでしょう。トヨタ自動車と同様に組織体制を柔軟にしようという考えからだと思います。


いま社会で求められていることは、従来の様な右肩上がりの経済を前提とした、規模を追い求める経営ではなく、いかに時代の変化に柔軟に対応して新しい商品を創出していく組織体制を整えることです。その為には、行き過ぎたピラミッド型の階層組織をフラットにして、風通しの良い仕事環境を積極的に整えて行く必要があります。


その意味では、今回の武田薬品工業のシャイアー買収については、財務の観点からその妥当性を説明するのみで、将来に向けた展望を明確に示しているとは言い難いものです。
情報技術とゲノム技術の融合により様変わりする医薬品業界において、もっとどの様な方針でイノベーションを図っていくのかを説明する責任があると言えるでしょう。


今日もありがとうございます!
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