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オリックスのM&A戦略!

皆さん、おはようございます!
様々な産業でM&Aが繰り広げられています。その中には単に企業の規模拡大を目指すものであったり、財務を目的とするものが多く含まれています。本来の事業戦略としてのM&Aは、新たな産業創出や新規事業創出に資するものである必要があると思います。



この所、オリックスが国内外の中堅企業を立て続けに買収しています。オリックスといえば、総合商社の旧日綿実業と旧三和銀行が1964年に創業したオリエント・リースが母体となる総合リース会社です。その金融会社であるオリックスが実業を行う企業の買収を行う意図は何処にあるのでしょうか。


オリックスはデータセンターや通信基地局なのどの設置・保守を手掛けるNTIコネクト(本社、米シカゴ)を数百億円で買収し筆頭株主になりました。NTIコネクト社は光ファイバー事業、データセンター事業、基地局などの設置事業などを米東部約40州で手掛けています。通信大手のAT&Tやグーグルといった企業と取引があります。


また6月には通信やガスインフラの保守サービスで米西部で強みを持つピーク・ユーティリティー・サービス(本社、米コロラド)を既に買収しています。背景には、次世代通信規格「5G]の導入を控え、通信インフラ関連の投資が加速すると判断しているからです。これら通信基地局などの設置・保守を手掛ける企業は国内でも再編が遅れています。


情報通信技術の進展にともない、定期的に更新投資が発生する他、継続的な保守サービスが発生しますが、これを情報システムにより遠隔監視する必要があります。これからの時代に必要な一大インフラビジネスになる可能性があります。今までは通信会社が自前で行っていた分野ですが、これからはアウトソーシングが主流となるでしょう。


一方、オリックスは酪農関連機器を輸入するコーンズ・エイジー(北海道恵庭市)を総額400億円で買収します。同社は人手をかけない乳牛の自動搾乳ロボットで国内シェア7割です。国内酪農家の戸数は後継者難や人手不足で10年で3割以上減少しており、生乳生産量の維持の観点から自動化ニーズが高まると判断したことが背景にあります。


また2年前には、動物用ワクチン製造で国内最大手の微生物化学研究所(京都府宇治市)と、動物用医薬品大手のフジタ製薬(東京都品川区)を買収しています。コーンズ・エイジー社と連携させることにより、IoT(=あらゆるものがインターネットに繋がる)による個体管理システムや医薬品の開発に繋げる考えを持っているようです。


この個体管理システムですが、推測になりますが乳牛一頭一頭を識別管理し、健康状態を維持しながら良質な生乳を豊富に搾乳できる様に一体管理するものではないかと思います。オリックスが手掛けているのは、その個体管理システムというバリューチェーンを構築する為に必要な再編を手掛けているということが出来ると思います。


本来、これらの新たな産業を創出する為に必要な買収に依る再編は総合商社の常套手段であったのですが、リース会社のオリックスが戦略的に取り組みはじめていると言えます。
元々、総合商社系であるとも言えますが、背景には先行きオペレーティングリースをオンバランス(=貸借対照表に計上)する必要から、新たな糧を模索していると思います。


オリックスは、この他にも国内の後継者のいない中小企業の買収も手掛けています。恐らく、単に買収して経済価値を高めて転売するのではなく、今回の事例のように、新たな産業を創出すべく様々なビジネスモデルを構想しているのでしょう。最近、行き過ぎた資本の論理に依るM&Aが増えている中で、一線を画する素晴らしい取り組みだと思います。


武田薬品工業によるアイルラド製薬会社シャイアーの買収に関して物議を呼んでいます。
これからの時代は悪戯に企業の規模を大きくすれば良いというものではありません。武田薬品工業に欠けているのは、自社の財務内容を良くすることを注力し過ぎており、将来に向けてどの様な事業ビジョンを描いているのかが見えてこないことだと思います。


これからはM&Aという金融取引においても、社会の抱える課題をどの様に解決すべきか、そして私たちの暮らしにどの様なメリットがあるのかという視点を持たなければ、ステークホルダーの支持を得られないと思います。その点、オリックスの取り組みは、中堅企業を対象とした非常に地道な取引ですが、理解できるところがあると思います。


中堅企業が自助努力により業界再編を行おうにも限界があります。その呼び水を担う役割にオリックスが徹しているという意味では、非常に時流を得たものだと思います。
オリックスもその様な取り組みの中から、本業であるリースという金融事業を進化させていくことでしょう。単なる投資目的とも異なるM&A戦略に期待したいと思います。


今日もありがとうございます!
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